文春オンライン

なぜ『ちゅらさん』は“伝説の朝ドラ”になったのか? 当時22歳の国仲涼子が「底抜けに明るくて単純」だった本当の意味

2024/04/26
note

『ちゅらさん』(2001年度前期)はエターナル朝ドラである。20世紀の朝ドラでナンバー1が『おしん』(1983年度)だとしたら、21世紀は『ちゅらさん』か『あまちゃん』(2013年度前期)であろう。

 2024年4月、NHK総合は、朝ドラ、昼ドラ、夜ドラと朝から晩まで15分のドラマ尽くし。昼のいい時間に再放送がはじまった『ちゅらさん』は21世紀最初の朝ドラで、当時相当気合を入れて作られたのだろう。今でも「朝ドラの中で一番好き」という声も多く聞く。

当時22歳で『ちゅらさん』ヒロイン・えりぃを演じた国仲涼子(44) ©文藝春秋

 沖縄の方言で「美しい」を意味する『ちゅらさん』。現在のTVモニターの画角は当時と違うため、画面の両脇が空いて画質もやや粗い。だが、画面からあふれる輝きは23年経って見てもまったく色褪せない。“正統派朝ドラ”の実力を見せつけてくれる。

ADVERTISEMENT

 ヒロインのえりぃ(国仲涼子)の底抜けの笑顔、沖縄の広い空や海を見て、Kiroroの主題歌『Best Friend』のワンフレーズ「まだまだまだやれるよ」(作詞・作曲:玉城千春)を聞くたび、背中を押してもらえるようで、心が晴れる。

『ちゅらさん』が人気作になったワケ

 昭和47年5月15日、沖縄返還の日という極めて象徴的な日に、ヒロイン・えりぃこと古波蔵恵里(国仲涼子。幼少期を演じた子役の浦野未来は国仲に似ている)は生まれる。

「世界で一番ちゅらさんど~!」と父・恵文(堺正章)が感激し、近隣の人たちがたくさん誕生祝いに集まって歌い踊る。未来への希望と多幸感に満ちたはじまりで、初回からぐっと引き込まれる。

『NHKドラマ・ガイド 連続テレビ小説ちゅらさん』(NHK出版)では菅康弘チーフ・プロデューサーが「取材をしていくうちに、沖縄は未来の可能性を十分感じさせる場所であるとともに、日本の他の多くの地域が失ってしまった、美しい、いいものをたくさん残し、保っている土地でもあるということでした」と述べていて、この観点が『ちゅらさん』を人気作にしたのではないだろうか。

沖縄の方言で「美しい」を意味する『ちゅらさん』。21世紀に放送された最初の朝ドラだった(NHK番組ページより)

 沖縄の登場人物たちは皆、先祖や、家族との関係を大切にし、昔ながらのお祭りや儀式にもリスペクトがある、キジムナーという精霊の存在も信じている。おじぃやおばぁが歴史を知るものとして家族の先頭に立って元気に活躍している沖縄。

『ちゅらさん』ではヒロインえりぃとその家族――父・母、おばぁ、兄、弟を主軸に描き、それが視聴者に愛された。沖縄の男は頼りなく女性がしっかり者という設定で、父は日がな一日ぶらぶら三線を引いてばかり、兄はあやしい商売に手を出している。でもなんだか愛らしい。