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もし食道がんになったら――食道を残す「化学放射線療法」は選択すべき?

2018/08/07

 食道がんは胸部、頸部、腹部を切開する非常に大きな手術だ。術後も呼吸機能が低下する合併症や、声がかすれる、飲み込みにくいといった後遺症が起こりうるだけに、「できれば手術したくない」と誰もが思うのではないだろうか。

 こうした気持ちに応えるべく、食道を温存したまま根治させる方法が模索されてきた。それが抗がん剤治療と放射線治療を併用する「化学放射線療法」だ。

 もともと、「扁平上皮がん」という種類(組織型)が大半を占める食道がんは、放射線が効きやすい特徴を持っている。これに抗がん剤を併用すると、放射線の感受性が増す。平たく言うと、放射線がより効きやすくなるのだ。

 なかには化学放射線療法によって根治できる患者もいるうえ、進行度によっては手術とほぼ同等の成績が得られることも臨床試験で示されつつある。それゆえ、2000年前後から、「手術しなくても、食道を温存できる治療法」として、マスコミで注目されるようになった。

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「化学放射線療法は、あまりお勧めできない」理由

 しかし、この治療法にはデメリットもある。とくに、食道がんの外科医に聞くと、「化学放射線療法は、あまりお勧めできない」という人が多い。その理由は、化学放射線療法を受けると、再発後の手術のリスクが上がるからだ。

 化学放射線療法を受けても、全員が完治するわけではない。完全にがんが消滅する人は進行度によって2分の1ほどだ。残りの半分の人はがんが残ってしまうので、手術することになる。また、がんが消えた人でも再発することがあり、それも手術で取ることになる。

 つまり、化学放射線療法を受けても、結局は手術を受けることになる患者が多いのだ。この手術を外科医たちは、「サルベージ手術(救済手術)」と呼んでいる。

 前述した通り、サルベージ手術はリスクが高い。なぜなら、放射線治療の影響で組織が硬くなり、癒着することがあるからだ。また、血流が悪くなるため、術後の合併症も起こしやすくなる。