文春オンライン

さらばハリルホジッチ 協会との「本気のコミュニケーション」はあったのか?

2018/04/28
note

ノルマを課せられていたわけではない

 結果を解任の理由にされるなら、まだ納得ができたということ。ただし、協会側からは何かノルマを課せられていたわけではない。「(欧州遠征では)選手たちを試していた」と語っており、テスト色を強めるやり方にもクレームがあったわけではない。

 自分が感じていないコミュニケーション不足を解任理由に挙げられ、もしそれが本当であるのならばなぜ対処するためのサポートをしてくれなかったのか。監督に対する協会側の「コミュニケーション不足」こそ問題ではなかったのか。

 就任以降、協会内に監督室を用意してもらい、日本にいるときはなるべく協会内にいた。隣の部屋には代表スタッフもいる。問題があればその部屋を訪ねて、話してくれればよかったじゃないか。そんな風にも聞こえた。

ADVERTISEMENT

 もちろんこれはあくまでハリルホジッチ前監督の主張である。ひょっとしたら協会サイドは何かしらアプローチを試みたのかもしれないが、指揮官が聞き入れようとしない態度だったとも考えられる。確かに一人ひとりとじっくり対話するというよりは一方的に主張するタイプのようにも感じてしまう。

 いや、たとえそうであったとしても問題を一緒に解決していこうとする努力が先だったと個人的には思う。

会見には330人を超える報道陣が集まった ©getty

協会は本気のサポートをしたのか

 田嶋会長は4月9日の会見で「選手とのコミュニケーションやそういうものが足りないと伝えたが、実際には総合的ないくつかのこと(理由)があるのが事実」と語っている。ならば「総合的ないくつかこと」を事前にハリルホジッチ前監督に対して伝えていたのか。韓国戦の後に解任を考えたのなら、欧州遠征の前にプレッシャーを掛けていたのか。つまりは見せかけのコミュニケーションではなく、本気のコミュニケーションを取っていたのか。見せかけのサポートではなく、本気のサポートだったのか。

 協会サイドは「本気」と言うだろう。しかし大敗した韓国戦も、マリ、ウクライナ戦も「本気のハリルホジッチ」を見たとは思えない。協会は本気のつもりでも、十分ではなかったら、不十分になる。十分になるまで、やってこその本気ではないのか。

 現体制でワールドカップを戦えるか戦えないか、の判断も遅かったと言わざるを得ない。大会2カ月前の解任から言っても、本気の評価がそこにはあったのか。

 コミュニケーション、サポート、評価。いずれも十分とは言えないから、今回の事態を招いたのだとあらためて感じた。

 蒸し返そうとする話ではなく、これは未来のための話だ。

 代表監督をしっかりと評価する、しっかりとサポートする体制が整っていないから、こんな事態が起こってしまう。