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「(身体に)悪いのは分かっている、でもやめられない」という普遍的な問題

『世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事』を読んで

2018/05/17
note

うっすらと「きっとそうだろうな」と思っていた推測が突きつけられた本

 思い返せば、タバコもパッとやめました。人様に言えない年齢から吸い続けてきたはずのタバコも、もうやめて12年ですか。いまではタバコを吸っている席に同席するどころか、同じ店でタバコを吸っている人がいるだけで嫌悪感を覚えるようになりました。昔は、駅のホームで乗り換えるごとに車両移動し、覚えているホーム上の喫煙用灰皿の場所をきっちり記憶してニコチン補給するのが意識高い喫煙者だと思っていました。いま思うと、どれだけ迷惑をかけて生きてきたことでしょう。

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 1年前に懺悔の記事を書いておるわけですが、このやっちまった感というのはいつまでも心の中に黒歴史として残るのだろうと思うのです。

http://bunshun.jp/articles/-/1554

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 先日、Twitter界隈で著名な津川友介さんという医師の方が書かれた『世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事』という本を買ってきて、目が点になるわけです。

「白飯は身体に悪い」とか「牛肉や豚肉など赤い色の肉は良くない」ですと… うう… 何となく、うっすらと「きっとそうだろうな」と思っていた推測がはっきりと現実のものに。一日朝昼晩茶碗一杯は飯を喰って暮らせと教えられて育ってきた私の目の前に「お前の喰ってきたその白飯は砂糖と同じぐらい身体に悪いものだったのだ」と証拠として突き付けられる瞬間であります。

タレをいっぱいつけた焼肉ご飯が、エビデンスに粉砕される

 あるいは、家族と毎週行くことを楽しみにしている焼肉。ちゃんと焼いた肉にタレいっぱいつけてアツアツのご飯とともに口の中へかき込む文化が、エビデンス至上主義という実に正しい事柄に正面から粉砕され、灰燼に帰してしまうのでありましょうか。巻末に参照論文が並んでいたので興味のあるものを拾い読みして、津川さんの言うことの正しさを指さし確認するにつけ、誰とも食べない昼飯はラーメンや牛丼などB級グルメを楽しむ私のささやかな喜びが音を立てて崩壊していくのを感じます。

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 酒を控え、タバコをやめ、しかしなお、科学は私に新たな節制を求めるのでありましょうか。「運動すれば救われる」と書かれておりますが、持病のある私は運動ができません。ただただ食べるものでコントロールするしかない。代謝の衰えとともに太りゆく自分。結婚前は177cm51kgだった痩身ボディが家内の飯の旨さゆえにMAX81kgまで6割増量となった予期せぬ事態に震撼するわけです。