血糖値を測定したことがあるだろうか? 「ある」と答えたほとんどの人は、会社などで行う健康診断のはずだ。通常の健康診断では、前の日の夕飯を食べたあと10時間ほど食事を摂らない状態で「空腹時血糖値」を測定する。そしてこの測定結果の血糖値が基準値よりも高いと、糖尿病予備軍(境界型)や糖尿病と診断される。

 糖尿病患者は年々増加傾向にあり社会問題にもなっている。日本では2000万人以上、40歳以上に限定すると3人に1人は血糖異常=糖尿病予備軍というデータも存在する。この数字の増加を食い止めるための血糖値検査のはずなのだが、実は健康診断での測定では十分ではないのだという。『糖質制限完全マニュアル 血糖値が安定すればやせられる』の著者で医学博士、北里研究所病院・糖尿病センター長の山田悟氏に、まだあまり広く知られていない血糖値の真実について聞いた。

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『糖質制限完全マニュアル 血糖値が安定すればやせられる』(山田 悟 著)

(1)健康診断の血糖値測定は不十分

 もちろん健康診断で血糖値を測ることは重要ですが、それだけでは十分でないのも事実です。というのも、健康診断で測定するのが「空腹時血糖値」だからです。

 空腹時血糖の正常値は110mg/dl未満。これが110~125mg/dlだと糖尿病予備軍、126mg/dl以上だと糖尿病と診断されます。そして、この数値が異常値(=110mg/dl以上)になるのは、実は糖尿病発症の1~2年ぐらい前なのです。

 血糖値の測定はもう一種類あります。食事を摂ったあとに測る「食後血糖値」です。これの正常値は140mg/dl未満で、140~199mg/dlだと糖尿病予備軍、200mg/dl以上だと糖尿病と診断されます。この数値が異常値(=140mg/dl以上)になるのは、糖尿病発症の6~10年前ぐらいとされています。

 つまり、空腹時血糖に異常が出現してから糖尿病の発症まではさほど時間がかからないのに対し、食後血糖値の異常から発症まではかなりの猶予があるのです。進行状況によっても異なりますが、この期間に生活習慣を改めるなどの対処をすれば、糖尿病の発症を食い止めることが十分に可能なのです。

 ならばなぜ健康診断で食後血糖値を測定しないのか。それは、健康診断では例えば胃の検査など、血糖値だけでなく様々な検査を総合的にします。そのためには、空腹時(前日に最後に食事をしてから10時間あけた状態)で受診していただく必要があります。結果的に健康診断では空腹時血糖値を診るということにならざるを得ないのです。

山田悟医師は「40歳以上は注意。3人に1人が糖尿病予備軍。血糖値は空腹時でなく『食後』の140未満を目指すように」勧める。©松本輝一/文藝春秋

(2)近い将来、血糖値は自宅で測定できる

 まだあまり広く知られていませんが、血糖値は薬局の店頭で測定することができます。実施している所の数が多いと言えませんが、インターネットで測定可能な所を調べることもできます。

 食後血糖値については数値の上がり方に多少の個人差はありますが、食事の1時間後を目安に測定するのがいいでしょう。測定可能な薬局が会社の近くにあれば便利ですね。例えばランチのあと薬局に寄って血糖値を測定して会社へ戻る、ということができればビジネスパーソンの健康管理としてばっちりだと思います。

 測定できる薬局が近くにないということであれば、血糖値測定器を購入するという方法もあります。高度医療機器を取り扱う薬局でのみ販売されていて、これについてもあまり数が多いとは言えないのですが、インターネットで販売店を調べることができます。

FreeStyleリブレ。アボット ジャパン(株)。

 また、指先から血液を穿刺せずに血糖値を測定できる「FreeStyleリブレ」が9月1日から保険適用となりました。保険適応はあくまでも限られた糖尿病患者さん向けのものですが、血糖値測定器が広く多くの人に普及していく大きなきっかけとなるでしょう。

 血糖値測定器が一家に一台あって、体温や体重を計るように血糖値を測定する時代はすぐそこまできています。