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(4)油は肥満の原因ではなく、むしろ血糖値を下げる

 やせるために揚げ物など油を控えている、という方は現在でも多くいると思いますが、実は最新の研究により、それはまったく意味がないと証明されています。

 これも著書の中でエビデンスとともに詳しく解説していますが、例えばアメリカでは「脂質を食べないようにしても肥満の予防にはならない」と政府機関が明確に表明しています。

 中性脂肪が増える原因は血糖値が異常に高くなること=糖質を過剰に摂取することにあります。

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 から揚げを茹でたささみに替えても、脂身たっぷりのサーロインステーキを赤身肉に替えても(もしかしたら一時的に筋肉量が落ちて体重が減ることがあるかもしれませんが)本質的な意味でやせることはありません。

 体の中に「脂」を溜めている原因は、食事の中の「油」ではなく「糖質」にあるのです。むしろ脂質とたんぱく質は食べれば食べるほど血糖値が下がるという、最新の研究結果も報告されています。

(5)血糖値を上げてしまう“ヘルシー”の落とし穴

 朝食にフルーツたっぷりのスムージーを作って飲むという人も多いと思います。しかし、果物=ヘルシーと決めつけている人は要注意です。だいたいの果物は高糖度です。フルーツたっぷりのスムージーはコップ1杯で30~40gぐらいの糖質量はあるはずです。

 果物はGI値*が低いからダイエット中でも安心、というのも誤解です。果物の甘さの主体はブドウ糖ではなく果糖なのでGI値が低いわけですが、果糖は体内で中性脂肪に変化します。GI値が低い=血糖値が上がらないからといって摂り過ぎると肥満の原因になります。(*GI値とはグリセミック・インデックスの略で食品ごとの血糖値の上昇度合いを数値化したもの)

 また、果糖は依存性が強いことでも知られています。小さなお子さんにフルーツジュースなら体にいい、と思ってたくさん与えていると、それが肥満の原因にもなりかねないので注意しましょう。

健康的なイメージが強いけれど、フルーツジュースは要注意。©文藝春秋

 近年の健康ブームで、様々な食事方法や食べ物が“ヘルシー”とされ推奨されていますが、「健康のために」と思い摂っている食事が体に悪影響を与えている場合もあるのです。

 実際に私も、出張の際に新幹線の中で「30品目バランス弁当」という一見体に良さそうなお弁当を食べたことがあるのですが、これだけで食後血糖値は200mg/dlまで上昇しました。これは糖尿病と診断される数値です。体にいいと思いこんで食べ続けていれば大変なことになりかねません。

(6)血糖値が安定すれば多くの病気や老化の予防になる

 血糖値が安定すれば太ることもありませんし、多くの病気を防ぐこともできます。生活習慣病と呼ばれる糖尿病、高血圧、脂質異常、さらにガンや認知症などの予防・改善にも繋がります。

 さらに血糖値が高いほどAGE*が産出され、シワやたるみなどの原因にもなります。特に女性にとっては美しい肌を保つためにも血糖値の安定が必要なのです。(*AGEとは終末糖化産物のことで、これが蓄積すると糖尿病の合併症を引き起こす原因の一つとされる)

血糖値をコントロールすれば肥満も病気も予防できる。©iStock.com

(7)運動をすれば血糖値が下がる

 近年の研究では、運動をすることで血糖値が下がることも分かっています。

 短期的にみると有酸素運動だけでも血糖値を下げる効果があり、長期的にみると有酸素運動と筋トレの両方を行ったほうがより高い効果を得ることができる、という研究結果があります。

 血糖値が上がるのは食後なので、そのタイミングに合わせて運動するのが最も効果的です。とはいえ、食後に有酸素運動を、というのも難しいと思いますので、例えばビジネスパーソンの方でしたら、会社から少し遠めの場所でランチを摂って、長めに歩いてオフィスへ戻る、というようなことから始めてみてはいかがでしょうか。


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©松本輝一/文藝春秋

山田悟(やまだ・さとる)
医学博士/北里研究所病院 糖尿病センター長
一般社団法人 食・楽・健康協会代表理事
1994年慶應義塾大学医学部卒業。2007年5月北里研究所病院糖尿病センター長に就任。糖尿病患者が食べる楽しみを持ち続けることの大切さを追求していく中で、医学的根拠に基づく楽しく美味しい食事療法「ロカボ」の考え方を生み出す。2013年11月一般社団法人 食・楽・健康協会を設立し、ロカボの普及のために企業での指導や講演などを活発に行っている。『糖質制限完全マニュアル 血糖値が安定すればやせられる』、『糖質制限の真実』、『世にも美味しいゆるやかな糖質制限ダイエット』など著書多数。