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“競馬する小説家”高橋源一郎が語る『うるぐす』とダービーと『カルテット』

テレビっ子・高橋源一郎インタビュー #2

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タモリさんのことは、尊敬しています

―― 僕がずっと高橋さんに伺いたかったのはタモリさんのことなんです。というのも、タモリさんもデビュー当時、ハナモゲラ語とかで言葉を解体するというようなことをやっていたじゃないですか。それは高橋さんのスタンスに通ずるところがあるんじゃないかと思うんですが、当時はどのようにみていましたか?

高橋 タモリはデビューした当時からみてました。イグアナのモノマネとか「四カ国語麻雀」をやるアイパッチの人のイメージが強くて、朝日新聞か何かに「異能の芸人」って紹介記事が出ていたのも憶えています。筒井(康隆)さんや赤瀬川原平さんたちとハナモゲラの活動もしていましたよね。だから、60年代から70年代のサブカルチャーを生きて、それを独自のエンターテインメントにしていった人だと思ってます。あと、タモリがヘビーなジャズオーディエンスっていうのは知ってた。すごくたくさんジャズを聴いてるでしょう。植草甚一さんが亡くなった後、彼のジャズのレコードコレクションを買ったんだよね。

 

―― そうですね。

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高橋 未亡人が処理しきれなかったのをタモリさんが何千枚も一括して買ったそうですね。さすが、と思いました。サブカルチャーの帝王だった植草甚一のコレクションを買うのはタモリしかいないだろうと思っていましたから、尊敬してますよ。

『カルテット』第3話、松たか子と見つめ合ったときのこと

―― 昨年は坂元裕二脚本の『カルテット』第3話にゲスト出演されましたね。

高橋 ドラマはいいですよね。「僕は素人だ」って威張れるから(笑)。やっぱり文学の話をする時、「僕は素人だ」って言えないじゃないですか。俳優としての仕事は無責任に「できません。絶対無理」って言えるので、ドラマはウェルカムです。役にもよりますけどね。

―― 『カルテット』の役どころは素晴らしかったです。

高橋 あれは娘(満島ひかり)を見捨てた詐欺師の役。いい役だなと思って(笑)、それならやってもいいやと思ってお受けしました。元マジシャンの役なんで、手品をやらなきゃいけなくて練習が大変だったけど。

 

――どんな練習をしたんですか?

高橋 それがですね、僕は不器用だから、さぞや特訓してくれるんだろうと思ったら、スタッフが動画を送ってきて「これを観て覚えてください」って。

―― 自主練!

高橋 マジか? って(笑)。で、撮る当日にいきなり「できますか?」って。「取りあえずやってみてください」って言われてやったら「素晴らしい。何の文句もないです」だって。まあ、完璧に覚えようと10日間ぐらい真剣にやりましたから(笑)。だから、ほとんど手品のことしか覚えてない。

―― でも病室で横たわっているシーンは画になってました。

高橋 満島さんと絡むシーンはなかったんですけど、松たか子さんと見つめ合うシーンがあったんですよ。恥ずかしい、絶対無理だって思ってたら、メガネ取っていいっていうんで外しました。あのシーン、僕が何も見えなかったから、見つめ合えたんです(笑)。で、何テイクか撮って終わった瞬間、松さんが爆笑してるんだよね。「何がおかしいんですか?」「いや、おかしかったです」って。楽しかったですね。

 

#1 テレビっ子歴50年! 小説家・高橋源一郎「朝まで生テレビに出るわけないでしょ」
http://bunshun.jp/articles/-/7503

#3 「ユーチューバーはテレビの未来を担うか?」小説家・高橋源一郎の“生活と意見”
http://bunshun.jp/articles/-/7505

写真=鈴木七絵/文藝春秋

たかはし・げんいちろう/1951年広島県生まれ。81年『さようなら、ギャングたち』で第4回群像新人長編小説賞優秀作を受賞しデビュー。88年『優雅で感傷的な日本野球』で三島由紀夫賞、2002年『日本文学盛衰史』で伊藤整文学賞、12年『さよならクリストファー・ロビン』で谷崎潤一郎賞を受賞。6月7日より『日本文学盛衰史』が平田オリザ脚本によって舞台化される(http://www.seinendan.org/play/2018/01/6542)。

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