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安保法制反対デモに参加した事務次官 前川喜平が語る「安倍政権下の“苦痛な仕事”」

前文部科学事務次官・前川喜平 2万字インタビュー #3

2018/06/22

genre : ニュース, 政治

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安倍さんのところに行くのは別に嬉しくもなかった

――そして2012年末、ついに第2次安倍政権がやってきます。首相動静を見ていると、前川さんも官邸に出入りすることが多くなってきます。官邸の安倍首相はメディアで見せる顔とは違うものですか?

前川 官邸に行ったほとんどのケースは教育再生実行会議のご説明で、大臣のお供で付いて行っただけです。「次の回ではこんなことを議論していただき、総理にはこの時間からこの時間までご出席いただきまして、こんなことでご発言頂きたい」。そういうシナリオ説明です。

 

――コミュニケーションは特になかったですか。安倍さんが自分の教育観を語るようなことは。

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前川 聞いたことはないですね。「ああ、わかった」くらいの感じでしたし、私も安倍さんのところに行くのが別に嬉しくもなかったですから(笑)。

――菅官房長官にもご説明に行くわけですか?

前川 そうですね。長官には会議の説明のほか、人事関係のことでお伺いしたこともあります。人事については菅さんのご意向という形で副長官の杉田和博さんから突き返されたことも何度かありましたね。菅さんねぇ……、まぁあんまり好きじゃないな。

――やはり人事に口を出されるところなどは嫌いなところで……。

前川 いやいや、嫌いとは言ってませんよ。好きじゃないと言ってるだけ(笑)。だけど、去年の今頃のことを思い返すと、好きにはなれませんよね。散々人格攻撃されたわけですから。弁護士と名誉毀損で訴えようかと相談もしましたから。

 

「お友達ばっかり」の教育再生実行会議

――第2次安倍内閣の教育再生実行会議については、どのように思ってらっしゃいましたか?

前川 メンバーは安倍さんと下村(博文)さんのお友達ばっかり。教育政策を審議する場としての専門性も客観性、中立性も全くないですよね。狙いは第1次安倍内閣の教育再生会議の提言を実行に移そうとするものですが、安倍さんが言う教育再生とは戦前回帰、明治20年代から昭和20年にかけての50年余りしか通用しなかったイデオロギーを復活させようという考え方ですから。

第2次安倍内閣での教育再生実行会議 ©時事通信社

――2015年の9月18日には安保関連法案が参院で可決、成立しました。この時、前川さんは国会前のデモに足を運ばれたそうですが……。

前川 ええ、行きましたよ。参院本会議でいよいよ決まってしまうという最後の夜。私としては、一市民、一個人としての表現の自由を行使したいと思って参加しました。デモしたって何かが変わるわけじゃないって分かっていますよ。でも、私の心のバランスを保つ上でも「こんな法律は嫌だ」という言葉をどこかで発したいと思ったんです。

――一市民という言葉が出ましたが、ツイッターに「右傾化を深く憂慮する一市民」という名前の@brahmslover(ブラームス・ラバー)というアカウントがあるんです。前川さんはクラシック音楽でブラームスがお好きと伺いましたが、これは前川さんのアカウントではないかという噂もあるんです。

前川 ああ、それ私ですよ(笑)。