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野球場ではたらくビールの売り子さんのホンネ〜糸井さん、入江さん、死亡遊戯さんのプロ野球談義

糸井重里(ほぼ日)×入江眞子(元ビールの売り子さん)×中溝康隆(プロ野球死亡遊戯)スペシャル座談会【後編】

常連ではない人へのアプローチは?

中溝 AKBとかアイドルの推しメンに投票する感覚でビールを買ってるのかな。

糸井 推しメン、なるほどな〜。

入江 写真を撮って、わざわざ現像して後日、渡してくれたり。

糸井 「恋に似たもの」という山本夏彦さんの言葉があるけど、水商売の関係と似てるのかもね。つれなくしないでくれる人とのちょっと深い関係。向こうは安心しているわけだよね。やめてください! とは言われないわけだから。その良いグレーゾーンというか。

中溝 それを20歳そこそこで経験できてしまうのは、すごい社会経験だよね。

「プロ野球死亡遊戯」こと中溝康隆さん ©文藝春秋

入江 はい。常連さんが最近来ていないと、結構心配になります。

糸井 お店だよ、もう(笑)。

入江 常連さんが違う子から買っていると、ちょっと寂しくなったり。

糸井 あるだろうね。キュンとするな〜(笑)。常連ではない人へのアプローチは?

入江 私が狙っていたのは団体さん。それとカップル。カップルの場合、男性が頼むと、ついでに女性も頼んで下さることが多い。女性の方って、なかなか自分から手を挙げづらいんですよ。あとは、やっぱりタイミングですね。

糸井 楽しそうだね、聞いてると。大変そうだけど、やっぱり楽しみもありそう。

入江 お客さんで嫌なのは、売り子が通るじゃないですか。そうすると「あ、あの子可愛い」ならいいんですけど、「あの子、タイプじゃない」とか品定めされること。

中溝 いるよね。それは意外と聞こえているんだ。

入江 全部聞こえています。前に歩いている子と前後で比べられたり。だから逆に、あの子良いなという声が聞こえると、振り向いて目線を合わせたりして(笑)。

糸井 今度就活して入った会社はどういうタイプの会社なの。

入江 広告代理店です。

糸井 それは役に立つよ。相手が何を望んでいるかをいつも考えているわけだから。

中溝 売り子さん何人かに取材したとき、それぞれ就活がすごくスムーズにいきましたと言ってました。このくらいの年頃で毎日、オジさんとの会話を鍛えられているじゃないですか。

入江 面接で受けは良かったです。売り子でしたと言うと、食いついてくれたり。

中溝 たぶん売り上げ上位の女の子の話をまとめて本にしたら、面白いだろうなー。

入江 と思います。みんなそれぞれ違う戦略を持っていると思うので。

中溝 それはみんな先輩から教わるのではなくて自分で?

入江 教えてくれないですね。

糸井 競争だもんな。でもそれは、ブログでライターをやっていたのと同じことじゃない。こんな人いくらでもいるからやめておこうみたいなことは山ほどあったでしょ。

中溝 ブログを始めた当時、野球を書くということが下火だったんですよ、正直。サッカーはいっぱいいるけど、野球を、特に巨人を書く若いライターはほとんどいなかった。でも書いているうちに、やっぱり読みたい人もそれなりにいるんだなと思うようになってきて。それは結局、自分で読者とやり取りをしながらつかんでいくしかない。そのへん、売り子さんもライターも同じですね。

©文藝春秋

プロ野球死亡遊戯 (文春文庫)

中溝 康隆(著)

文藝春秋
2018年7月10日 発売

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