「村田修一、どうすんだって話ですよ。あと2週間ですよ。放っておいていいのかって。ああいう男気のある選手がこのまま終わっていいの?」
先日の夜、シャワーを浴びながらradikoを聴いていたら、TBSラジオの野球特集で文春野球コミッショナーを務める村瀬秀信氏がそう熱く語っていた。「やんちゃな男気のある選手が球界から絶滅しちゃう寂しさもあって、ジャイアンツは岡本が育ったから戻したっていいじゃないですか」という言葉には思わず考えさせられる。球団にも選手にも一種の洗練と効率性が求められる最近の球界には、村田さんのような個性派ベテランプレーヤーを獲る余裕はどこにもないのだろうか……。プロ野球開幕から約4カ月、日々のペナントレースに一喜一憂している内に梅雨も明け、サッカーW杯も終わり、猛暑が日本列島を襲い、柴崎岳と真野恵里菜が華麗にゴールインして、気が付けば夏休み真っ只中の7月下旬だ。NPBの支配下登録期限の7月31日は刻一刻と近付いている。各球団、外国人選手の獲得や緊急トレードなど駆け込み補強も目立つ。
そして、村田修一は独立リーグのルートインBCリーグ、栃木ゴールデンブレーブスで“37歳の夏”を迎えている。松坂世代の一員として甲子園を湧かせた“17歳の夏”からちょうど20年が経過した。今季はここまで打率.323、7本塁打、37打点、華麗に4併殺。ちなみに福島ホープスに所属する同じく元・巨人のボウカーも打率.360、8本塁打と主力打者として活躍中だ。村田さんは徐々に状態を上げ、6月は打率.404(57打数23安打)、5本塁打、19打点でBCリーグの6月月間MVPにも選出されている。7月21日の群馬戦でもホームランをかっ飛ばした。
37歳のベテランに求められる役割
オフに巨人を自由契約になった直後は何球団か獲得候補として挙がるも結局実現せず、通算360本塁打、17年シーズンも14本のアーチを放った平成を代表するスラッガーが行き場を失った。移籍先が決まらず、その強烈なキャラからチームの和を乱す的なイメージ先行の報道もあったが、春に雑誌『週刊プレイボーイ』の企画で栃木からの再スタートを切った背番号25のインタビューへ行ったが、まったくそんな印象は受けなかった。それどころか古巣球団に対する愚痴も言わず、巨人の25番を継承した岡本和真にエールを送り、「3回も優勝させてもらって、巨人でしか味わえない経験もたくさんできましたから」と前を向く。もし自分が同じリストラされた立場なら「ちょっと聞いてくださいよ〜」なんつって自己弁護に近いエクスキューズのひとつでもかましたかもしれない。村田さん、あんた男だなと話を聞きながら何度も思った。
「契約は僕が決めることでもないですし、若手を育成したいというのも球団の方針。どこの会社でも一緒じゃないですか。クビって言われればクビなんで、そこは受け入れないと次に進めない。野球をやってきたおかげで今の自分があるので、野球に対して文句を言うつもりはないです」
怒りや悲しみではなく、自分の置かれた状況を冷静に見つめ、できることをやるしかないと腹を括った37歳の姿。ひと言で書けば、大人だ。開幕前の時点で「(巨人移籍時は優勝へのこだわりが後押ししたが)今後、NPB球団から声が掛かるとしたら?」という問いに対しては、こう語っている。
「もし、僕がチームを優勝させられる存在なのであれば、とっくにオファーは来ていたと思います。だから、次の段階はちょっと違う目標になるでしょうね。外国人選手の獲得に失敗したとか、主力選手が怪我しちゃったとか、NPBに帰れるとしたら、チームはそういう状況でしょう。だとすれば僕は与えられた仕事をまっとうして、その穴をしっかり埋めることを目標にするだけです」
過去の実績やプライドにすがるのではなく、現実的に求められるであろう仕事をまっとうする覚悟。だから、例えば栃木では時に若手選手を気楽に食事に誘い、練習ではちょっとしたアドバイスも送る。球団側からはそういう役割も期待されていることを分かっているのだろう。どう考えても、チームの和を乱すような選手だとは思えない。さらに、NPB球団にとって村田獲得はいくつかの大きなメリットがある。