NPB球団が村田を獲得するメリットとは?
近年のプロ野球は新しい客層を開拓し、過去最高の観客動員数を誇っている。球場は綺麗に整備され、グッズや選手プロデュース弁当も充実。女性グループや家族連れも気軽に野球観戦に来れる快適な環境が整った。じゃあ次の段階はどうするか? 今のプロ野球は何でもある。だが、おっさんだけがない。そう、“おっさん色”が薄いのである(もちろん一時期意識的に遠ざけたというのもあるが)。各球団のマーケティングもそこには気付いていて、最近は過去の名選手を試合前に登場させるレジェンドイベントも増えた。つまり、今の新しいファン層を維持したまま、オールドファンを本気で球場に呼び戻そうとしているのだ。
先日のオールスター戦、注目は松坂大輔と上原浩治だった。今季の成績だけを見たら全盛期とは程遠い。けど、二人ともファン投票で選出された。観客は選手のプレーだけじゃない。その後ろに流れた膨大な時間を見ている。若手選手になくて、ベテラン選手だけが持っているものは「ファンと人生をワリカンした時間」である。その時間だけはいくらカネを積んでも買えやしない。加齢とともに力は落ちても、野球は敗者復活戦のスポーツだ。3打席連続三振でも4打席目の一発で、それまでのミスを取り返せる。いかに失敗するか。そこからいかに這い上がるか。だから、ファンは元スーパースターの松坂が愚直に這い上がる様に共感した。
村田の場合は、昨オフの自由契約後、テレビのスポーツニュースで何度も特集され、多くの週刊誌やタブロイド紙で「非情なリストラからの再出発」と取り上げられた。そんなメディアは古いって、近年の球界は新しさを追求するあまり、その手の古さが不足していた。大げさではなく現役選手では大谷翔平に次ぐ露出量だったのではないだろうか。熱心な野球ファンではない、もしくは最近球場から足が遠のいている30代以上の一般男性にとって、知名度では球界トップクラスだと思う。
彼らに「今の選手はよく知らないけど、同世代の村田がいるなら見に行こうかな」なんて思わせる存在。横浜と巨人の15年間で積み重ねた360本分のホームランのストーリーがあり、三塁手や一塁手のバックアッパーが可能で、右の代打やDHも任せられて、給料だって新助っ人よりはるかに格安ですむ。グッズだって売れる。期限ギリギリの生還、この諦めない粘りは受験生向けのお守りムラマックスグッズで展開できる、かもしれない。
なにより、そのヒット1本は誰よりも観客を熱狂させるはずだ。想像してほしい。村田修一がNPBのどこかの球団で復帰してペナントを左右する、またはCSや日本シリーズの大一番で終盤のチャンスに「代打・村田」で登場した時のことを。なんかゲッツー打ちそう……じゃなくて、今のプロ野球界でこれほど球場が盛り上がるシーンがあるだろうか。
未来は大事だ。でも、過去を簡単に捨てるジャンルに未来はない。
NPBは村田修一をこのまま終わらせてしまっていいのだろうか?
See you baseball freak……
※「文春野球コラム ペナントレース2018」実施中。コラムがおもしろいと思ったらオリジナルサイトhttp://bunshun.jp/articles/-/8001でHITボタンを押してください。
この記事を応援したい方は上のボールをクリック。詳細はこちらから。