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「『量』を抜きにして安全性を語ることは絶対に許されない」

 これまで検証してきたように、新潮が主張する危険性については、エビデンスがないものも少なくない。ただ、食べ物には一定の危険があるのは事実だ。必要不可欠な塩分も、摂り過ぎれば健康に悪影響があることは広く知られている。食品の衛生管理を専門とする鈴鹿医療科学大学の長村洋一教授が指摘する。

「どんな食べ物も、摂り過ぎれば健康を害する。『量』を抜きにして安全性を語ることは絶対に許されません」

 前出の伊藤教授が語る。

「食品の安全性を考える上で基本となるのは、『リスク=ハザード×量』という関係です。新潮には『過剰摂取すると(リスクがある)』といった記述が多く出てきます。しかし、『過剰』がどの程度の量なのかはどこにも記されていません」

 前述したように、食品添加物にはそれぞれ「一生涯、毎日摂取しても影響が出ないと考えられる量」である「1日摂取許容量」(ADI)が定められている。これは、膨大な量の生物試験を基に食品安全委で決定されたものである。

「例えば、保存料として使用されるソルビン酸の場合、EUでも同じADIが設定され、米国では一般に安全と認められる物質になっています。新潮ではソルビン酸の危険性を強調していますが、日本人はADIに対しわずか約0.3%しか摂取していない」(同前)

 連載の中では塩分や脂質の摂り過ぎにも警鐘を鳴らしているが、ここでも「量」の問題が見られる。

 記事では1日あたりの脂質や塩分の摂取量について、カップ麺一食で達するとの記述がある。

 ただ、記事中で例として挙げられているのは「カップヌードル キング」(日清食品)や、「ぺヤングソースやきそば 超大盛」(まるか食品)など、通常サイズの1.5倍以上の内容量を持つ商品なのだ。

報道には科学的根拠が必要

 意見書を提出した前出の唐木名誉教授が指摘する。

「リスクが判明した場合、いち早くその情報を伝えるのはメディアの責務ですが、それは科学的根拠がある場合に限ります。新潮は、科学的事実に反する情報を載せて、いたずらに消費者の不安を煽っているのです。

 新潮にコメントする評論家の方が私見を述べるのは結構ですが、科学的信頼性はありません。新潮編集部の責任はもちろんですが、評論家の方々も『商売のため』と言われても仕方がないのではないでしょうか」

 小誌は、新潮に毎週コメントを寄せている“理論的支柱”ともいうべき人物にも話を聞いた。自ら立ち上げた「加工食品診断士協会」の代表理事を務める安部司氏だ。ベストセラー『食品の裏側』の著者でもある。

「『食べるな危険』というのは俺は知らんよ。それはあいつらの書き方さ。食べてはいけないって煽ったほうが雑誌は売れるじゃん。俺はまったく嘘は言ってない。要は国のデータを盲信するなってことだよ。

 添加物にメリットがあると思うなら、インスタントラーメンだって食べればいいじゃん。それで成人病になったっていいじゃん。食べてガンになればいいじゃん。だっていい思いをしたんだから。ただ、その時に俺の社会保険料まで使うなって話だよ」

 週刊新潮編集部に専門家からの批判などについて見解を尋ねるとこう回答した。

「本誌記事は食品添加物等のリスクについて報じたものです。食品添加物に関しては、今現在、安全だとされているものが、未来永劫安全だという保証は全くありません。実際、一旦は認可されたものの、その後、突如として使用禁止になった食品添加物は60種類にものぼります。また、記事の中でも触れた通り、いたずらに消費者の恐怖を煽る意図はいささかもありません」

 世には、さまざまな健康記事、健康本が溢れている。過激な見出しであればあるほど、世間の耳目を引きやすいのは確かだ。ただ、事は命、健康にかかわるだけに、危険を煽るだけでなく、どれだけの根拠に基づいているかを、小誌も含めたメディアは、伝える責任がある。本記事が、読者が「正しく怖れる」根拠になれば幸いである。