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元スタジアムアナが語るオールスターゲームの演出のウラ側

文春野球コラム オールスター2018

2018/07/13
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普段のリズム感とは違う? オールスター演出のウラ側

 試合前後のイベントやセレモニーは、基本的にはNPBと代理店が大枠を作るのですが、それ以外の領域は、実施する球場のフランチャイズ球団が仕切ることになるので、独自のカラーを出すことができます。

 イニング間は、会場の担当球団によって様々なイベントが行われます。私が担当した2回とも、オリックス球団が普段の試合で行っている、お客さまを巻き込むスタイルのイベントを中心に、“うちの球場らしさ”を訪れた人たちにアピールしました。

 他球団の名物の出し物や、ない球団はチームの特色を生かした出し物をこちらで考えて行いました。ビジョンに映ったお客さまに、巨人・原監督のグータッチをやってもらうコーナーでは、最後、原監督ご本人にもやっていただき、場内が盛り上がりましたねー。

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 ただ、そのイニング間の時間が曲者なんです。NPBが2010年に通達した規約では、「前の攻撃の第3アウトが宣告された時点から2分15秒以内に、次のイニングのプレーを開始する」ことになっています。

 しかし、オールスターゲームではこれが適用されず、私が担当していた時には「必ず2分30秒以上、マージンを取るように」というお達しが出ていました。それは、テレビ地上波の中継がイニング間に充てるCMの時間を長めに設定していたからです。このため、普段のリズム感で行動していた選手たちはじれてしまい、行きたがる選手などは、ベンチの前に出てキャッチボールをしたり、グラウンドに先走っちゃう人もいましたっけ。

 そりゃそうでしょう。2分30秒以上って、ビートルズだったら1曲演奏しきっちゃう時間です。おかげでイニング間のイベントは充実しましたが、選手たちにとっては少々やりづらい。そんなリズム感だったと思います。

 普段は「時短だ! 時短だ!」と、現場に上から目線で時間の短縮を厳命しながら、こういう時には「延ばせ」というダブルスタンダード。試合時間の遅延で中継の時間枠に収まりきれず、途中で打ち切るなんていうナンセンスな出来事も過去にはありました。CMの枠が多すぎて、中継に切り替わったらもう次のイニングもワンアウトになっていた……とか、大事な瞬間を生で中継できていなかったなんていう事はザラで、自ら中継の醍醐味を削いでいるのと同じです。仕切っている広告代理店の存在も大きいのでしょうが。

 選手の交代はオープン戦並みに頻繁で、イニング間のイベントも盛りだくさん。普段のリズム感とは違った状況で試合が進む。ゆっくりその場の空気を楽しみながら……というほどのゆとりは、正直、私にはありませんでした。気がつけば「終わっていた」という感じです。

2012年のオールスターのメンバー表 ©堀江良信

 きょう、第1戦の場内アナウンスを担当するのは、今年デビューしたばかりのバファローズのボイス・ナビゲーター、神戸佑輔さん。いろいろ大変だと思いますが、ぜひ良いパフォーマンスで訪れた人たちを魅了して下さい。

 ずっとパ・リーグを応援してきた身としては、今年もパ・リーグの選手の、特に、京セラドームを本拠地とするバファローズのメンバーの活躍に期待したいなぁ。全力投球が気持ちいい守護神・増井浩俊投手をはじめ、コンパクトボディにフェラーリのエンジンを積んだような力強さの吉田正尚選手はホームラン競争も期待です! さらに、守護神につなぐ絶対的なセットアッパーとしてフル回転する2年目の山本由伸投手。テンポのいい投球が光るチームの勝ち頭、アンドリュー・アルバース投手。「プラスワン投票」で滑り込んだ堅守の安達了一選手と、多士済々。全国中継だし、いいプレーでバファローズの名前をしっかりアピールして欲しいというのが、切なる願いです。そして、スワローズの坂口智隆選手やタイガースの糸井嘉男選手が、古巣の京セラドームに凱旋するのも楽しみです。

 セ・パのドリームチームによる球宴。ワクワクするような試合を期待したいですね。

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