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“考える人”ヨシタケシンスケの「大人が読んでも面白い」絵本の世界

絵本作家・ヨシタケシンスケ インタビュー #1

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正直に作らないと、僕みたいな疑り深い子にバレてしまう

――その「疑り深い」性格というのは、かなり小さいころから?

ヨシタケ そうだと思います。言葉尻ひとつとっても、「この人の言うことはもうちょっと聞いてあげてもいいよな」って思えるような言い方ができないだろうかと。日本において、絵本というものは「世界で一番飽きっぽい人=子ども」が読むもの。どんなにいいことを言っていても、つまんないと途中で閉じちゃうんですよ。だから僕としては、たとえ言わなければならないテーマが途中で立ち消えたとしても、「最後までめくってみたい」と思わせるようなものにしたい。

 最初に『りんごかもしれない』(ブロンズ新社)という絵本を書かせていただく時に、1冊しかやらせてもらえないと思っていたので、どうせやらせてもらうんだったら、「自分が小さい頃読んでいて楽しかった絵本の要素を全部入れたい。逆に自分が嫌だった絵本の要素は絶対に入れたくない」と思ったんですね。

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――「楽しかった絵本の要素」って、どんなものでしょうか?

ヨシタケ 今年お亡くなりになったかこさとし先生の『からすのパンやさん』(偕成社)のような、情報量の多い図鑑っぽさです。色々なパンがずらーっと並ぶ見開きページがあって、とにかくその描写が好きだったんですね。子どもの頃の僕が、そのページを飽きずにずっと見て、母親のところへ持っていくと「お母さん、僕はきょう、このとんかちパンっていうのが食べたいんだけど、どのパンが好き?」みたいな感じで、絵本をきっかけに親子で会話をしていました。もちろん、ひとりで好きなだけ、じっくり見るというのも絵本の楽しみなんですけどね。「自分だったら、こういうのが好きなはずだ」っていう信念には、正直に作らないと。僕みたいな疑り深い子に、バレてしまうと思うんですよ。