ちくわがマカロニと踊り狂う『ちくわのわーさん』、昆布巻きが漫才の相方を探し歩く『こんぶのぶーさん』……。目鼻のない食べ物たちによる奇想を描く、「知る人ぞ知る」謎な絵本作家・岡田よしたかさん。なんでまた、こんな作風なんですか?

岡田よしたかさんの仕事場におじゃましました(犬のふうちゃんも)

なんで食べ物を主人公にしてるんですか?

――おじゃまします。

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岡田 奈良まで来ていただいて……。しかし、この夏はなんでこんなに暑いんやろう。うちのふうちゃん(犬)も、昨日からバテ気味ですわ。

――ずっと奈良住まいなんですか?

岡田 いや、生まれは大阪です。東大阪のほう。

――岡田さんの作品は、何が独特って「食べ物」が主人公であるところです。しかもアンパンマンみたいに目鼻があるわけじゃないから、ちょっと不気味なんだけど、なぜかかわいい。

 

岡田 最初ね、食べ物に目鼻とか手足をつけて描いてみたんですけど、面白くないんですよ。類型的で。それで目鼻やめました。

――そもそも、なんで食べ物を主人公にしはじめたんですか?

岡田 あんまり頭使わんで描けるから(笑)。絵本作家になる前からずっと僕は絵を描いていたんですけど、おにぎりとか食べ物が道歩いてたり、乱舞してるような絵をいっぱい描いていたんです。手当たり次第、眼に映るものをなんでも描いてやろうっていう意図で。

 

ひたすら頭を使わんと筆を動かす

――それは早く、正確に描こうというデッサンに近いものなんですか?

岡田 そうですね、いわゆる絵画の構図のようなものは考えずに、ひたすら頭を使わんと筆を動かす。すると鮭の切り身なんかでも、だんだんユーモラスに見えてくるんですよ。切り身一つとっても、形が様々でしょう。おにぎりにしても、握り方で形が違うし。同じ食べ物でも、それぞれ形が違うって当然のことに気付いたら、まるで意思を持ってるような気さえしてきたんです。

 

――切り身なのに。

岡田 今にも動き出しそうやなと。そこからお話ができそうやな、と。