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ちくわが踊る! うどんが走る! 謎すぎる絵本作家・岡田よしたかが語る“奇想の流儀”

絵本作家・岡田よしたかインタビュー #1

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「岡田さん、カニのフォークで描いてください」

――画家として絵を描く基礎はあったとはいえ、絵本作家は「物語」を作らなければならない。そこは苦労しませんでしたか?

岡田 『おーい ペンギンさーん』(2001年)という作品を出すときに、福音館の編集者にすっごい絞られたんです。ストーリーのアイデアを出しても出しても、やり直しばっかさせられて。それはしんどいんやけども、おかげで話を考えるのがだんだん、おもろなってきてね。もっと面白いもの考えたろって、結構やる気出して取り組みました。

――その『おーい ペンギンさーん』の次作、岡田さんの絵本第2作目が「食べ物シリーズ」の初作品になる『特急おべんとう号』ですね。

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岡田 お弁当のおかずが、みんなで電車に乗って遠足に行く話。おかずたちがマラソンする「全日本おべんとうマラソン」と、金魚を食べようとした猫の話「ねこ 大災難」も一緒に収録されてます。

――やっぱり話のアイデアはごはんを食べてるときに浮かんでくるんですか?

岡田 全然そんなことないです。編集者さんに「次はバナナでどうですか?」とか言われて、「ああ、バナナいけるな」って思うくらい。『こんぶのぶーさん』は嫁さんが何の時か忘れましたけど、ボソッと言った「こんぶのぶーさん」って言葉がおかしくて、いつかそのタイトルで絵本描こうと思ってた作品ですね。嫁さんは、「そんなこと言った?」って、すっかり忘れてましたけど。

 

――編集者から、さすがにこれで絵本は描けないっていうリクエストって、ありましたか?

岡田 いや、それはないですよ。食べ物だったらだいたいいける(笑)。食べ物以外でリクエストされて面白かったのは、「岡田さん、カニのフォークで描いてください」って言われたとき。カニ食べるときに使うアレね。『ぼくはいったいなんやねん』という本なんですけど、自分が一体何者なのかわからなくなったカニフォークが自分を探す話です。

――ラーメンをすくおうとしてみて失敗したり、カブトムシから「きみ そのつのは どうみても カブトムシやで」って言われて混乱したりするんですよね。

岡田 そう、自分を見失う(笑)。『おべんとう号』以来、食べ物で描いて欲しいっていうリクエストが多かったから、あれは珍しい仕事をさせていただきました。

 

なぜ春雨、糸こんにゃく、そうめんがよく登場するのか

――岡田さんの三部作と呼ぶべき『ちくわのわーさん』『うどんのうーやん』『こんぶのぶーさん』をはじめ、作品には脇役として春雨や糸こんにゃく、そうめんといった細長いものがしばしば出てきますよね。出番が多いからには、岡田さんの好物なのかなあと。

岡田 僕の好物は寿司です(笑)。せやけど、好きなものだけ絵本に描いてるわけじゃないんですよ。やっぱり形を重視してるのかもしれませんね。細長いものはうねうね動きが面白くできるでしょう。まあ、太くてもクネクネさせやすいのは描くの好きか。ちくわも、うどんも、こんぶも、体をくねらせやすいでしょう。子どもは、ぐにゃぐにゃ動くものが好きなんですよね。自作の読み聞かせに呼ばれていくこともあるんですけどね、絵を見てケラケラ笑ってる子もおる。