鶴澤寛太郎さん ©HAJIME WATANABE

 細棹、中棹、太棹……三味線には色々種類がある中、人形浄瑠璃文楽の太棹三味線は、デーン、デーンとお腹に響く重厚で迫力ある音を出す。その文楽三味線のホープ・鶴澤寛太郎さんが来る10月10日、東京・紀尾井ホールの「午後の音楽会」でチェリストの岡本侑也さんと共演する。

「初の顔合わせです。2人で当コンサート用にチェロと太棹のために書き下ろされた新作をご披露するほか、文楽三味線の若手チームで劇中曲や舞台効果音として出てくるメリヤスを集めた組曲『雪月花』を演奏します。岡本さんが弾かれる黛敏郎さん作曲『BUNRAKU』では、曲の冒頭でおくりという文楽三味線特有の節がチェロで表現されます。文楽ファンの方にも、細部まで聴きどころが満載です」

 寛太郎さんの祖父・鶴澤寛治さんは文楽三味線の人間国宝。祖父に弟子入りして13歳で初舞台を踏み、今年入門20年目を迎える。

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「太棹というと、津軽三味線を思い浮かべる方が多いと思います。音階の特質上、文楽の太棹は津軽三味線のように即興で他の楽器と合わせるのが難しく、他ジャンルとのコラボも限られます。ぜひ、この機会に、文楽三味線の音を聞きにお越し下さい」

文楽の太棹(義太夫三味線)を弾くバチは、厚みが40ミリほどもある。文楽の太棹の特徴について、寛太郎さんは「音の厚みと深み、そこから来る表情の豊かさが文楽の三味線にはあります。そこに演奏者のバチ遣いや技術、表現力が合わさることで、“弾いている部分”も“弾いていない部分”も表現できるのが特徴だと考えています」と語る。 ©HAJIME WATANABE
母方の祖父であり、師匠の七代目鶴澤寛治さん(文楽三味線・人間国宝)と。今年90歳の寛治師匠はいまも現役! ©HAJIME WATANABE
平成28年2月文楽公演(東京)、『関取千両幟(せきとりせんりょうのぼり)』猪名川内より相撲場の段では、〝曲弾き〟と呼ばれる一種、曲芸的な演奏を披露した。この写真は、三味線を逆さに持ち、バランスを取りながら、一の糸、三の糸を交互に4本の指ですばやくはじくように演奏するパート。観客の目が一斉に寛太郎さんに集まる……。 写真提供・国立劇場、協力・人形浄瑠璃文楽座
 
2018年9月文楽公演(東京)は、9月8日(土)~9月24日(月・休 )、東京半蔵門の国立劇場にて上演。演目は、“浪花の夏を彩る侠客と女房たちの心意気”を描く夏狂言の傑作『夏祭浪花鑑(なつまつりなにわかがみ)』(ちらし上写真)と、東大寺二月堂にまつわる良弁僧正の伝説を題材にした名作『良弁杉由来(ろうべんすぎのゆらい)』と『増補忠臣蔵』(ちらし下写真)。
『良弁杉由来』より二月堂の段。寛太郎さんは『良弁杉由来』『夏祭浪花鑑』に出演する。写真提供・国立劇場、協力・人形浄瑠璃文楽座
9月29日~10月18日は、毎年恒例の文楽地方公演。今年は全国11か所を回る。演目は『義経千本桜(よしつねせんぼんざくら)』と『新版歌祭文(しんばんうたざいもん)』と人気作品が揃う。協力・文楽協会
 

INFORMATION

●2018年9月文楽公演(東京) 特設サイト
https://www.ntj.jac.go.jp/kokuritsu/h30/bunraku_9.html

●2018年11月文楽公演(大阪)
https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/bunraku/2018/11115.html?lan=j 

※文楽では現在、太夫・三味線の研修生を募集しています。
https://www.ntj.jac.go.jp/training/trainee/2929.html