空前の落語ブーム。大の落語ファン・東出昌大さんが、敬愛する噺家・柳家喬太郎師匠とじっくり語り合いました。異色の落語対談、前編は志ん朝から白鳥までを挙げての「名人とは何か」、そして現在の二ツ目ブームをめぐって……。(後編に続く)

人気落語家・柳家喬太郎師匠(左)と無類の落語好き・東出昌大さん(右)がたっぷりと語った

iPodで落語が好きになった

東出 師匠、お久しぶりです。

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喬太郎 何年か前、『an・an』でいっぺん、対談させていただいて以来ですね。

東出 最近も喬太郎師匠の高座を拝見しましたよ。ウルトラマンの格好をなさっていて(笑)。

喬太郎 ああ、ウルトラマンっぽい柄の着物の時だ。お忙しいのに、寄席に来てくださってるんですね。東出さんが(春風亭)一之輔君と共演された『落語ディーパー!』(Eテレ)、あれ面白いですね。番組を見ていると、東出さんの落語に対する愛がものすごい伝わってきますけど、落語を聴くようになったのはいつからなんでしたっけ?

東出 19歳の頃からです。父から「このCD、iPodに入れて」ってお願いされて渡されたのが落語のCDだったんです。その時は、十把一絡げに古典芸能って「なんか古臭いもの」って思っていたんですが、iPodに入れながら興味本位で聴いていると、「あれ、なんかこれ、面白いぞ」って。それでだんだん、長めの電車移動の時に聴くようになったりして、好きになったんです。

 

喬太郎 うれしいですよね、そうやって何かがきっかけで落語を好きになってくれるって。

喬太郎師匠の『時そば』のマクラが大好きで

東出 「落語を聴き始めるなら何から聴けばいい?」って聞かれることがあるんですけど、その時は必ず喬太郎師匠の『時そば』を薦めているんです。

喬太郎 ハハハ、僕の「時そば」ですか! ありがとうございます。

東出 師匠がマクラで話す、コロッケそばのコロッケの気持ちの話が大好きなんです(笑)。だんだん、つゆが衣に浸み込んでいくさまを、師匠が座布団の上で表現するわけですけど……。

喬太郎 なので、ちまたでは喬太郎の『時そば』は「コロッケそば」だって言われてる。東出さんには、特に繰り返し聴くような噺家はいるんですか?

 

東出 まわりまわって結局、志ん朝師匠に落ち着きます。DVDは全部持っています。

喬太郎 全部!

東出 CDもほとんど持ってます。最近も東宝名人会での『粗忽長屋』が収録されたCDを買いました。

喬太郎 へぇ、志ん朝師匠の『粗忽長屋』ってあんまりイメージがないな。それは珍しい。