文春オンラインでは、「集まれ『インターネット老人会』」特集に合わせて、読者からのエピソードを募集しました。その中から佳作として入選した作品3本を掲載します。
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若い頃に雑誌に載ったことがある。97年頃、B夜書房から出ていた「インターネットマニア」という雑誌に。勤め先の社長がこの雑誌でコラムを掲載しており、「ホームページやってる女性を探してる編集さんがいるけどホタテさんどう?」と連絡があった。「ホームページやってる女性」ってだけで雑誌に載る時代ってすごいですよね。
この社長が会社のホームページを自分で作っていた。簡単なところだけ教えてもらって私も作ってみた。今だったら、2歳児でも作れちゃうくらいの簡単なものだ。
「少し女性っぽい服に着替えていただけると」
さてB夜書房といえばエロ&サブカルの総本山。私はその話を受けることにした。
取材当日、編集者とカメラマンが我が家へ。私の家は畳にちゃぶ台、その上にMac LC575。座布団に正座でMacを操るという、東洋かぶれの外国人?というような私の部屋で和やかにインタビューは進む。Tシャツにジーンズ姿の私にカメラマンが申し訳なさそうに言った。
「少し女性っぽい服に着替えていただけると非常に助かります」
B夜書房だというのに、こちらこそ気がきかなくてスミマセン!と花柄のワンピースに着替える私。
当時、モデムはガーピーゴロゴロ……と繋ぐやつですよ。速さは144とか。速さっていうか遅さ? プロバイダが安いとこだったので、テレホーダイタイムになるとずっと話中、ホーダイ出来ないじゃん!ということで早起きして会社に行くまでネットを見まくっていた。
ボロいアメ車を熟女が薄着で洗車している
洗車、英語で言うとCAR WASHというカテゴリーがある。いわゆるそういうサイトの1ジャンルだ。アメリカの個人が作ってるサイトでお気に入りのがあった。素人が撮ったぼんやりした写真と英文。田舎の殺風景なボーリング場、ボロいアメ車を熟女が薄着で洗車している。どうしようもない感じが良かった。
ある日あるページがnot foundになっていた。数日経っても変わらず、もしや気がついてない? そこで私はサイト主にメールを書いた。なぜってそこにメールアドレスが書いてあったから。よくそんなサイトやってる知らない外国人にメール出したもんだ。
ハロー! 日本から! いつも楽しみにしてる。ところでnot foundになってるページがあるよ。気がついてる? hotate :-)
すぐに返事が来た。知らない人からメールが来てびっくりした。
「ハーイ! 日本からなんて信じられない。インターネットってすげえ。ページ直したからチェキラ!」
見ると、なんと直ってるじゃないですか、サイトが。すげえ!