『ローカル路線バス乗り継ぎの旅』、蛭子能収と太川陽介の顔が思い浮かぶが今はちがう。去年からは『ローカル路線バス乗り継ぎの旅Z』であって、蛭子太川時代とは別の進化を遂げている。
内容はまったく同じである。レギュラー男2人とゲストのマドンナが路線バスと徒歩のみで目的地を目指す。
ではZになって何が変わったか。レギュラー男が替わった。テレビ東京はなぜこの2人に替えたのか。
新レギュラーは俳優の田中要次と作家の羽田圭介。蛭子太川とくらべると小ツブ感が……と最初思ったし、交替当初は本人たちも「何か独自色を出したい」のかいろいろ変わったことをしてた気もするが、やがてそんなことはどうでもよくなって、特色といえば羽田圭介が宿で部屋を取る時に「芥川賞作家の羽田圭介と申しますと必ず言う程度」になった。今はこの2人の、取りつくろえない素の姿が、なによりも存在感を高める。
要するに、いつもゲッソリしているのだ。そりゃそうだろう、この番組を見るたびに「日本の田舎ってほんとにいやだ……」という景色を見せつけられる。美しい里山なんてものはなく、排ガスまみれの国道や県道、荒れた畑、プレハブの廃屋、いかにもまずそうな客のいないラーメン屋、切れた街灯。ポツンと建つ家には電気が灯っているが、ここで行き倒れてもその家の人はきっと出てきてもくれまい……と思わせるような、どうしようもない風景である。そんな中、路線バスは「ここにいったいどんな目的が?」と思うような場所で唐突に終点となる。放り出される3人。