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杉村太蔵が語る“相場観”「僕はテレビのギャラ交渉が大好きなんです」

薄口政治評論家・杉村太蔵さんインタビュー#3

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元証券マンだから、ギャラの交渉が大好きなんです(笑)

―― マネージャーがいないと、番組のギャラ交渉とかも自分でやらなきゃいけないですよね。

杉村 そうです。全部自分でやっています。

―― 杉村さんは元々「文化人枠ギャラ」だったのを変えてもらったという話を聞きました。

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杉村 そうそう。「タレントギャラ」にしてもらったんです。そういうギャラの交渉とか、大好きなんです(笑)。元証券マンだから。「これに対してはいくらお金がかかりますよ」というのをずっとやってきているので。やったことない人は苦手じゃない? 価値の実体がないものの値段を交渉するって難しい。人はできるだけ安く買いたい。こっちは高く売りたい。難しいのは相場なんです。たとえば、こういうペットボトルの飲み物だとわかりやすい。これを100円と言えば納得するけど、1万円と言ったら、なんだ?ってなる。

 

他の出演者に「僕は1本100万円です」と言ってみる

―― 確かに。

杉村 商売で重要なのは、相場を知るということ。それは証券マンのテクニックが生きましたね。まず番組全体の総予算を想像する(笑)。出演者というのは自分のギャラを絶対に教えませんから。口が裂けても言わない。それでね、自分はどのくらいのギャラが適正なのかというのを知りたいわけじゃないですか。不当に高く要求してもいけないだろうし、安くしたらもったいない。

 ある日、番組でひな壇の出演者たちの中で、ギャラの話になったんですよ。そういう時に、みんな「自分は事務所に所属しているからわからない」とか言うんですよ。ホントか?って思いながら聞いていたんですけど、その時、「僕は個人だから全部わかってる」って言うんです。それで試しに、「この番組、今日の収録、1本100万です」と言ったら、みんなが「エーッ!?」てなるわけ。ということは、僕は1本100万じゃないんだと。別の番組では、「1本80万」だと言ってみる。また「エーッ!?」ってなる。まだ高いんだなと(笑)。

 

―― 相手の反応を見て相場を探るんですね。

杉村 どのくらいか見ているわけです。たとえば自分は10万しかもらっていないのに、杉村は80万だと、びっくりする。その反応というのはみんな素直なわけです。そういうふうに証券マンというのは相場を見抜く。たとえば、仕入れ値。これをいくらで仕入れてきたんだろうなといったときに、「どれくらいで仕入れたんですか」って聞いても教えてくれない。1本50円くらいで仕入れているものに対して、「こんなオシャレで、僕だったら200円でも300円でも払いますね」って言ったら、相手も、ニヤッとするわけですよ。人間って。ところが、「これ、いいですね。でも、これに20円出したらバカですもんね」と言ったときに、顔が引きつったら、あっ、それより高いんだなと。人間というのは表情でわかっちゃうわけです。

「タレント・杉村太蔵」は代えがいない

―― だいたいの値段は言えないとして、「文化人枠」から「タレント枠」になると何倍ぐらいになるんですか。

杉村 全然違います。どのくらい違うかと言ったら、電車通勤からタクシー通勤に変わるぐらい違う。そのくらいの待遇の差が出てきます。テレビにおける文化人専門家というのは、それほど価値はありません。経済の専門家、山っほどいます。薬物の専門家、腐るほどいます。代替品がいっぱいある。だけどタレント・杉村太蔵というのはこの人しかいない。だから価値があるんですよ。タレントというのは代えがいない。ここの番組は杉村太蔵じゃないと果たせないものがあるとなったら、タクシー通勤になる。 

―― なるほど!

杉村 で、番組MCになると、運転手付きのハイヤーになる(笑)。