中国人も絶句の胎盤餃子からアマゾンの強烈ドラッグまで世界を股にかけて挑んだ珍食奇食は数知れず。その体験をまとめた『辺境メシ』が刊行された。著者である辺境ノンフィクション作家・高野秀行と発酵デザイナー・小倉ヒラクが既成概念を突き崩す食体験の醍醐味を語り合う。「味覚の稼動領域が広がっている」2人の愉快な対談。

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現地に行かないと食べられない「ヘンな食べもの」

小倉 高野さんが世界中を旅するなかで出会った「ヘンな食べもの」について書かれた連載が『辺境メシ』にまとまったので、一気読みしました。最初から最後まで抱腹絶倒でした。高野さんはめっちゃ色々な場所に行ってますね。

小倉ヒラク氏 ©末永裕樹/文藝春秋

高野 ヘンな食べものは現地に行かないと食べられないからね。

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小倉『辺境メシ』で紹介されていた「ホンオ」を僕も食べたことがあります。ホンオはエイを発酵させた韓国料理で、とてもくさい。僕は「発酵デザイナー」を名乗っていて、専門領域は「発酵」です。その観点からホンオのヤバさを解説すると、エイは血液中に尿素などが含まれていて、死後に微生物が尿素をアンモニアに分解します。それをさらに好気性発酵させたのがホンオです。揮発しているアンモニアを吸い込むと有害なので、そろりそろりと盗人のように食べなければなりません。吸っちゃうと頭にガーンときて、目から火花が散りますよね。

世界最凶の臭気を放つホンオ ©高野秀行

高野 ヒラク君もヘンなものを結構食べてるよね。最近はどんなことしてるの?

小倉 47都道府県の発酵文化を発掘する旅を始めたところで、超田舎のおじいちゃん、おばあちゃんに会いに行っています。

高野 日本の辺境を旅しているわけだね。