空気の乾燥する季節がやって来た。女性でなくても、肌の乾きが気になる人は少なくない。
一方で、お風呂の有難みが増すのもこの季節。たとえ狭くとも、わが家の風呂に浸かって一日の疲れを癒すひとときは至福の時だ。
そんな「乾燥」と「入浴」が、じつは大きな関係を持っている。上手に入浴すれば、肌の乾燥を防ぐことが可能なのだ。
汚れや垢だけでなく、表皮までも剥ぎ落としている
夏はシャワーで済ませていた人も、寒い冬には浴槽のお湯に浸かって、「アー」とか「ウー」とか「やれやれ」とか、何かしら意味のない声を発するものだ。黙ってお湯に浸かっても構わないのだが、何か一言あったほうが疲れは取れるような気がする。ただ、そのことについてのアカデミックな研究というのは聞いたことはないし、今回のテーマとも違う。
今回お伝えしたいのは、「お風呂での石鹸の使い方」だ。ここでいう「石鹸」は固形石鹸だけを指すのではなく、ボディソープのような液体石鹸も含めた総称としての石鹸だ。
「乾燥肌を防ぎたいなら、まず石鹸と決別することから始めるべき」
と断言するのは、形成外科医で皮膚細胞の再生医療支援事業を行う株式会社セルバンク代表取締役を務める北條元治医師。いきなりの大胆な提言だが、理由を聞いてみた。
「ほとんどの人は、石鹸で汚れや垢を落とすことが肌にいい――と考えていますが、これは間違い。実際には汚れや垢だけでなく、表皮までも剥ぎ落としているのです。肌を守るために存在している表皮を石鹸や垢すりタオルなどで強引に剥がしてしまうので、肌の保湿が維持できなくなって乾燥するのです」
垢すりタオルでゴシゴシ擦るなどもっての外
北條医師によると、肌に付着した汚れは、石鹸を使わなくても簡単に落とすことができるという。浴槽の中で肌をやさしく撫でるのが一番効果的だが、それだとあとに入る人に迷惑をかけるので、浴槽でゆっくり温まったら、あとはシャワーで汚れを洗い流せばいいのだ。
この時に石鹸を使うと必要な表皮まで落ちてしまう。シャワーのお湯を体に当てながら、手で優しく撫でるだけで十分。タオルで擦る必要もない。まして、ナイロン製の垢すりタオルでゴシゴシ擦るなどもっての外。肌を傷めつけるだけのことなのだ。
ならば石鹸や垢すりタオルを使うことに、まったく意味はないのだろうか。
北條医師は「まったくないことはない」という。
「垢がたくさん取れれば、ある種の快感を得ることはできますからね。“収穫の喜び”ですよ。でも、その喜びはあくまで自己満足に過ぎなくて、肌にとっては損傷でしかない」