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「第2志望でも納得できない病」で中学受験の親子が“壊れる”

「中学受験残酷物語」が生まれるメカニズム

 中学受験は両刃の剣。やり方を間違えると親子を壊す凶器にもなる。

 親子を壊すいちばんの原因となるのが、「全滅したらすべてが水の泡」だとか「第1志望に合格しなければ意味がない」というような「ゼロか百か思考」。

 ちょっとでもつまずいたとたんに不安に振り回されるようになり、冷静な判断ができなくなる。気付いたときには親も子もボロボロ。そこまでのリスクを冒して中学受験をする意味はどこにもない。

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せっかく入学した中学校を5月に退学

 ある私立中高一貫校の教員は、ため息交じりに教えてくれた。

「入学するなり、本校に対する不満ばかり言う保護者がいました。どうもうちが第1志望ではなかったらしいんですね。親がそうなら子もそうなる。親子で散々本校の悪口を言った挙げ句、5月には地元の公立中学に転校してしまいました」

 親が悪口を言う学校に毎日通わなければならない子供の気持ちを想像してみてほしい。胸の痛みを紛らわすために、親といっしょになってせっかく合格した学校を否定したのではないか。転校すればその傷は癒えるのか。だといいのだが……。

 これを「第2志望でも納得できないという病」と呼ぶ。

思春期前は親の価値観が「絶対」

 思春期前のこの時期には、子供は自分の価値観よりも親の価値観を通して世の中を見ている。それが絶対的な価値観であると信じて疑わない。自分の努力の結果が親を落胆させるものだったとしたら、子供の自己肯定感は下がる。それが中学受験の大きなリスクのひとつである。

 逆に言えば、親が、子の努力を評価し、どんな結果であろうとたたえることができれば、子供の自己肯定感の低下は阻止できる。

 中学受験という経験を「大変だったけれど良い経験」として心に刻むか、「つらいだけの残酷な経験」として心に刻むかは、親の心構え次第なのだ。