2019年の中学入試に向けて、志望校選びも佳境に入るころ。受験生のいる家庭では、模試の結果と偏差値表を見比べる毎日だろう。ただし、偏差値が高いからといって“いい学校”とは限らない。これには2つの意味がある。

幕張メッセで行われる千葉の私立中入試。一度に数千人が受験する

偏差値を上げる「入試戦略」とは?

 1つは文字通り、学校に対する価値評価は人それぞれで、単なる入試難易度を示す偏差値のような単純なモノサシでは測れないということ。もう1つは、中学受験における偏差値が複雑怪奇になりすぎて、単純な数字として比較ができなくなっているという意味だ。より端的に言えば、「バブル偏差値」。いくつかの条件が重なると、偏差値が異常値を示すことがあるのだ。

 まず前提として、昨今、できるだけ多くの受験生を集めたい私立中高一貫校は、入試回数を増やす傾向にある。首都圏ののべ中学入試回数は約1200回。学校数は約300。1校あたり平均約4回の入試を行っている計算だ。Aという学校に行きたいと思っても、1回目の入試を受験するのか、2回目の入試を受験するのか、「特進コース」の枠を狙うのかによって偏差値が異なる。

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 入試回数を増やして1回あたりの募集定員を減らせば、倍率は上がりやすい。倍率が上がれば結果偏差値(各受験生の模試での偏差値を、実際の中学入試での合否結果と照らし合わせて算出される。80%の確率で合格できることを示す偏差値を「80%結果偏差値」、50%の確率で合格できることを示す偏差値を「50%結果偏差値」などと呼ぶ)も上がる。「特進コース」のような特別枠の入試を設定し、合格者をごく少数に絞るのはまさにそういうケースに当たる。