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「午後入試」は偏差値が高めになる

 入試日を変えることでも偏差値は変動する。特に首都圏で、2月1日の午前中の入試を、2月2日以降に変更すると、偏差値は上げやすい。2月1日は東京・神奈川の私学の間で取り決められた中学入試解禁日。御三家をはじめとする難関校が一斉に入試を行う。しかしどこか一つを選ばなければならない。だから優秀な生徒が分散する。しかし、たとえば御三家の一角が、仮に2月2日に入試日を変更したらどうなるか。おそらく2月1日に別の御三家やそのほかの難関校を受けた受験生が、2日にはその学校に集中するだろう。それだけで倍率は高騰し、結果偏差値も上がる。

 さらに昨今では午後入試も盛んだ。午前中に1校受け、急いで移動し、午後にもう1校受験する。中学入試のダブルヘッダーである。たとえば2月1日の午後の入試には、同じ日の午前中に難関校を受験し終えた受験生が集まるため、ここでも結果偏差値が高めに出る。2月1日の午前と午後の両方に入試を行う学校で、総じて午後入試の結果偏差値のほうが高くなるのはそのためだ。ただしそういう学校では入学辞退者が多くなる。だからその分定員の何倍もの合格を出していることが多い。実際には合格者の上位層が抜け、下位層が入学する。実際の入学者の偏差値は、見た目上の結果偏差値よりも低くなりやすい。

「千葉・埼玉」には“おためし受験生”が集まる

 同様の理屈で、千葉・埼玉では偏差値が高く出る傾向がある。東京と神奈川の私立中学の間では、2月1日を入試解禁日とすることを取り決めているが、千葉・埼玉では1月中旬から入試がはじまる。2月1日の本命入試を前に、東京や神奈川からいわゆる「おためし受験」にやってくる受験生が多く、受験者数が非常に多くなる。2月には超難関校を受けるような受験生もやってくるため、複数回ある入試日程のどこかで定員を絞れば、その入試の結果偏差値は高めに出る。

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 競合の少ない日程に適度な募集定員の入試を設け、うまく広報すれば、その日の入試枠だけでも偏差値が上がる。するとその偏差値が注目されて、ほかの入試日の偏差値も上がる。これを私立中高一貫校の入試広報担当者の間では「入試戦略」と呼ぶ。これがうまくいくと、「見た目の偏差値」は高くなる。「バブル偏差値」のできあがりである。