どんな魚が獲れるかは「網を上げてみるまでわかりません」

 乗船した3月は、カタクチイワシの季節。キラキラと鱗を輝かせる大量の小魚は、ただただ圧巻。春になり水温が上がってくると真鯛やサワラ、夏になると大型のクロマグロがかかることもある。秋にはカマス、アオリイカ、カジキが旬となり、冬になれば、なんといっても寒ブリ。網の中には、まさに富山湾の四季が凝縮しているのだ。

「天然の生け簀といわれる富山湾で、何十年と漁師をやってきましたけれど、今日獲れる魚、明日獲れる魚、こればかりは網を上げてみるまでわかりません」と酒井代表。

ピチピチと弾ける、水揚げされたばかりのカタクチイワシ ©文藝春秋

 海面には、小魚のおこぼれを狙ったカモメたちが無数に集まり、帰港する途中には、富山湾の向こうに雄大な立山連峰の絶景が。

「今日はとてもラッキーです。こんなにきれいに立山と朝日を拝めることは滅多にありません」

高級魚「マヒマヒ」の新鮮なお刺身で朝ごはん

 さて、港に戻れば、たった今、水揚げされたばかりの魚で朝ごはん。これがとにかく旨い。

 本日の主役は、タラとシイラ。都内のスーパーで見かける機会は少ないシイラだが、ハワイではマヒマヒと呼ばれている、あの高級魚である。しかも、これ以上ない新鮮さだから、都会では滅多に味わうことのできないお刺身で。

ここに日本酒があれば、本当に最高…… ©文藝春秋

 漁師町だからこそ味わえる幸せな美味。ほかほかご飯で大満足だ。

 今回は、好天に恵まれたが、波が荒い、海流が速い、風が強いなど、漁のコンディションは日によりまったく異なる。非常に過酷な漁船体験となることもあるが、そのハードさこそが“本物”であり、「感動した」「また乗船しに来る」というお客さんも多いという。

 海の魅力は実に奥深いのだ。

酒井さんが語る、崎山地区での定置網漁

飲食店では味わえない“本物”の漁師酒をいただく

 能登半島の伝統文化を伝える崎山地区。今回は、もう1軒の漁師の家も訪ねてみた。タコツボ漁などを行う杉本純一さんと石中晋二郎さんのご兄弟である。本業は、7代続く船大工だ。

海辺に積み上げられたタコツボ ©文藝春秋

 残念ながらタコツボ漁は7~8月が季節。そこで今回は刺し網漁を体験した。網にかかった魚は、陸に戻ったらさっそく網焼きに。

 そして、焼き立ての香ばしい魚を丼に入れて、どぼどぼと熱燗を注いだ「骨酒」の旨さが堪らない。この豪快な味わい、どんな飲食店でも決して味わうことのできない“本物”の漁師酒だ。

飲み干したら、追い酒が。わずかな時間ですっかりベロベロ…… ©文藝春秋

 ちなみに、こちらのタコツボ漁、刺し網体験は、子どもから参加可能とのこと。暑い夏の日、獲れたてのタコで作るタコ焼きを肴に「ビールで乾杯!」も旨そうである。

三室の船大工

お問い合わせ

定置網乗船体験:(株)鹿渡島定置
電話:090-2035-4627(酒井)

タコツボ漁・タコ焼き体験、刺し網体験:崎山地区コミュニティセンター
電話:0767-58-1111
https://sakiyamachiku.com/

提供=崎山半島渚泊推進協議会