多くの土地オーナーから「土地活用のパートナー」として選ばれ続けている三井ホーム。土地活用のプロフェッショナルである同社担当者へのインタビューを通じ、三井ホームがパートナーとして選ばれる理由をひも解く本企画。今回は、東京都稲城市で進む木造大規模中層マンション「稲城プロジェクト」について取り上げる。本件を担当する施設事業本部 設計部 設計グループ チーフマネジャーの玉井一行氏と、技術研究所 研究開発グループ マネジャー小松弘昭氏に話を聞いた。
木造建築をリードしてきた当社に提案できることはないか
国土交通省は、住宅や建築物の木造化における先進的な取り組みを支援するため「令和2年度サステナブル建築物等先導事業(木造先導型)」(第1回)を実施した。ハウスメーカー、ゼネコンなどから12件の応募があり、7件を採択。そのうちの1つが三井ホームの「木でつくるマンションプロジェクト」通称〝稲城プロジェクト〟だ。同社にとってこれは、木造の中層マンションを日本に普及させるための試金石となる先導事業だという。
玉井 木造の建築物は、世の中にたくさんありますが、その多くは戸建住宅です。住宅のほかにも木造の市役所や学校などもありますが、木造のオフィスやマンション、テナント施設などはきわめて少ないのが現状です。
当社はこれまでにも大規模木造建築による医療・介護施設や福祉施設、文教施設、商業施設などの実績を積んできました。また北米を中心に木造による中層集合住宅の建築にも数多く携わるなど、木造建築の可能性を追求してきました。
サステナブルな資源である木材を利用する木造建築への期待が、日本だけでなく世界各国で高まっているなかで、日本で木造建築をリードしてきた当社に提案できることはないか――。そんな時、稲城市にあった当社の情報管理施設が移転し、広大な跡地を活用できることになりました。
駅からも近く、地形も申し分ない。ここに木造ならではのメリットや快適性は維持しつつ、丈夫で、普及性があり、事業としても成立するような大規模な木造のマンションを建てたら、日本に木造の集合住宅が増えるきっかけになると考えたのが、今回のプロジェクトの発端です。当初は、もう少し特殊な木造の建物、例えばショールームといったアイデアも挙がりました。しかし木造をリードしてきた当社だからこそ、普及性のある、いわば「コモディティ化」された建物で、事業性のあるものを提案するべきと判断し、マンションになりました。
小松 国土交通省の木造先導事業に応募することを目的に稲城プロジェクトを立ち上げたわけではありませんが、当社の案件が一番手で採択されたのは、やはりマンションだったというのが大きかったと思います。木造建築の中では、特に普及の可能性が高いと判断されたのでしょう。
稲城プロジェクトでは、特殊な工法は一切使わず、すでに確立された木造の建築技術を前提に、オリジナル技術でアレンジした建築方法を採用します。とにかく普及させることに主眼を置いているので特殊なことは避け、再現性が高くそれでいて、これからの木造建築のシンボルになるものを目指しました。