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なぜ君は総理大臣になったのか…「感動レベル」でひどかった! 菅首相、辞意表明までの“動き”

2021/09/04
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 信濃毎日新聞は一面トップで伝え、『首相「無関心」初動遅れ 自衛隊「政府甘すぎた」』(8月29日)。

 このとき菅首相が何に関心があったのかと言えば、党内での権力闘争だった。コロナやアフガニスタンより、国会を開くより、関心があるのは権力闘争。では権力を握ってこの1年、何をやりたかったのか。自分の言葉を持たない、発信しない、権力を握り続けることだけに関心があるように思えた。だとしたら控えめに言って「国難」でした。

 その権力闘争でも首相の仕掛けにはほころびがどんどん出てきた。「二階幹事長を交代させる」とセットで出していた「解散権を放棄して任期満了衆院選案」「臨時国会召集の見送り」の狙いは次の通り。

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菅氏と岸田氏から「切られた」二階俊博幹事長 ©文藝春秋

「解散せず、任期満了の選挙を決めると、どの議員も一斉に地元選挙区へ走りだす。総裁選どころではなくなる」(首相側近、信濃毎日新聞8月31日)

「国会答弁と総裁選の論戦で首相がパンクする」(首相周辺、同上)

 議論を避けるというシナリオは「首相の個利個略」と党内から批判されたという。この「個利個略」は毎日と朝日の9月2日の社説にも揃って登場。ちょっとした流行となる。

菅首相、策に溺れる

 これだけではない。今度は「総裁選の前に解散を仕掛ける」という案を急に出した。結果としてこれがとどめを刺す。読売新聞(9月2日)によればこの情報が出たあとに安倍前首相や小泉環境相に反対され、首相は一晩で「解散は難しい」と撤回せざるを得なくなったという。策士、策に溺れる。陰で激しく動き回る手法は官房長官や総務大臣の頃からの得意な振る舞いだったのでしょうが、同じことを首相になってやったら常にスポットライトを当てられ可視化されてしまった。

 思えば昨年秋に総裁選に立候補したとき、私は「ニュー菅」が登場するのかと興味津々でした。それまでの菅氏はバラエティー番組で言えば「裏回し」だった。ひな壇に座りつつMCの進行がスムーズにいくように場の空気を調整したり誘導していく役回り。しかし業界に実力者として認知されることだけでは満足せず、自分も「MCをやりたい」(首相になりたい)と菅氏は宣言したのだ。

「ニュー菅」はどんなMCになるのだろう? ちょっと興味がわくではないか。