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日本人の得意な“問題先送り” シャッター通り商店街の高齢店主たちが「実は困っていない」意外なワケ

2023/02/07
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店主は困っていないどころか…

 今、シャッターを閉じ、商店街で暮らしている多くの店主は、年金も潤沢、子供はサラリーマンで独立、税金は安い、つまり店主の多くは実はちっとも困っていないのだ。それどころか、ほかに家作などがあって不動産収入が潤沢に入ってくる人もいる。変に新しい事業をする意欲はないし、有効利用を考えたり、リニューアルをして他人に貸すのもリスクがあるからやめておこう、となるのだ。

 ひところ、若者たちがシャッター通りの店舗シャッターを開け、カフェを開業する、物販店を開設するなどの「商店街活性化策」が話題になったが、もともと人も歩いていない通りに、自己満足で出したお店であれば、初めのころこそ人目を引いても事業としては長続きしない。半年から1年程度でつぎつぎに閉店していく姿が多く見られた。でもそんな若者にスペースを提供したオーナー自身、あまり困ってはいないので、どうでもよいし、それをみる周囲の旧店主たちも、やや冷ややかな目で成り行きを見守り、撤退する姿に、

「やっぱりだめよね。あんなことしたってうまくいくわけがない」

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 と評論するのがオチであった。

「どうする相続人」状態に

 こうした今は何も困っていないシャッター通り商店街でこれから多発するのが二次相続だ。店の主人が亡くなっても一次相続では小規模宅地や店舗に関する特定事業用地の適用によって相続評価額は思い切り圧縮されるが、二次相続時点ではどうだろう。相続する子供はすでに現地で生活はしていない。商売もたたんでしまっている。つまりこの店舗付き住宅を相続するということは、親と同居する子もおらず、かつ店舗を営んでいない土地と建物を相続するので、税制上の特典を得ることができなくなるのだ。

 相続人である子の多くはサラリーマンで東京や大阪の大都市に居住、今さら実家に戻って商売などできないし、やる気もない。相続できたとしても固定資産税は親が所有していた時のようなわけにはいかなくなる。では、いらないから売れるだろうか。シャッター通り商店街の中の店舗を積極的に購入したいという人は現代ではほとんどいない。NHK大河ドラマではないが、「どうする相続人」だ。