ここ数年、「CBD」という成分が入ったサプリメントや化粧品、食品などを目にする機会が増えた。CBDとは「カンナビジオール」の略称で、大麻草などに含まれるカンナビノイドという成分の一種。ただし、大麻といってもCBDは違法成分ではない。
国内で流通しているCBDは、大麻草の成熟した茎や種子のみから抽出・製造されていないといけないことになっている。大麻取締法第一条は、大麻草そのものと大麻草から作られた製品のことを「大麻」と定義しているが、そこには「ただし、大麻草の成熟した茎及びその製品(樹脂を除く。)並びに大麻草の種子及びその製品を除く」と記されているからだ。
つまり、成熟した茎や種子のみから抽出・製造されたCBDは法律上の大麻には当たらない。そのため、CBD成分を含む化粧品や食品などの所持や使用も合法というわけだ。
自らも愛用する弁護士が語る「日本のCBD事情」
CBDにはリラックス作用があるとされ、長年研究が続けられている。やがて、CBD入りの商品が登場するようになり、海外ではキム・カーダシアンなどのセレブリティやスポーツ選手などが、「リラックスできる」「ストレスが緩和される」と使用を公言。日本でも数年前からこれらの商品を目にする機会が増えてきた。2020年からCBDビジネス法務に携わっている新城安太弁護士も、CBD商品愛用者の一人だ。
「私が愛用している電子タバコ(VAPE)用のCBDリキッドを使ってみたのがきっかけです。これは蒸気化したCBD成分を吸い込む仕組みなのですが、弁護士として『これが違法だったらマズいな』と思って調べてみたところ、茎や種子のみから抽出されたものであれば問題ないとわかり、安心しました(笑)。
一方で、文献などを調べているうちに、日本ではCBDに関する情報にアクセスしづらいことに気づいたんです。そこで、自分で情報発信も始めることにしました」(新城弁護士、以下同)
新城弁護士がCBDビジネス法務に携わるようになった頃、日本ではVAPE用CBDリキッドのほかに、舌下から摂取するCBDオイルやCBDグミなどの輸入品が主に流通していた。
「日本にあるCBD商品は、海外で作られた製品を輸入したものと、CBDの原料を輸入し、日本国内で化粧品やサプリメント、食品に加工した製品の2種類があります。最近は、後者の製品がほとんどですね」
当初は海外トレンドへの関心や健康志向の強い人の中で注目を集めていたが、昨年、CBDへの関心はさらなる高まりを見せた。海外では大麻から製造された「難治性てんかん」の治療薬などが承認されており、日本もこれらを解禁しようという流れから、大麻取締法改正に向けた動きが活発になったのだ。
「成分規制」になればさらなる盛り上がりも
現行法では、有害成分があるなどとして大麻草から製造された医薬品の使用は禁止されてきたため、医療用の解禁は法改正の大きなポイントとなっている。
「医療用の解禁と並んで注目されているのが、部位規制の撤廃です。成熟した茎や種はOKで、葉や花などそれ以外はNGと部位によって線引きされてきたものを、これからは成分によって規制しようというものです。大麻草などに含まれる大麻成分のうちTHC(テトラヒドロカンナビノール)は、精神活性作用や幻覚作用などをもたらし、マリファナの原料になっています。成分規制になればこのTHCが禁じられる一方で、CBDは茎や種以外から作られたものも認められることになります」
茎や種からのCBD抽出は、大量の大麻草や大掛かりな施設が必要で、コストもかかる。そのため、成分規制が主流の海外からは日本市場に新規参入しにくいという現状がある。
「今年の通常国会で改正案の提出が見込まれていたこともあり、昨年は日本のCBD市場への参入を考える海外企業からの問い合わせがあったり、日本国内でもCBD製品を作る企業が盛り上がりを見せたりしていました。ところが、実際には提出されず、まだ法改正されていません。次のチャンスは秋の臨時国会か来年の通常国会か? と予想されています」
品質を見分ける3つのポイント
法改正が実現していないとはいえ、日本でCBD商品への関心が高まり、身近な存在になりつつあることには違いない。しかし、大麻由来成分ということで「本当に安全なの?」と不安を抱く人もいるだろう。また、あたかも劇的な効果が得られるように煽った販売を行う業者もいたりするため、消費者としてはどの商品を選んでいいかが悩みどころとなる。新城弁護士によれば、「安全性や品質の高さを見分けるポイントは3つある」という。
「1つは成分分析表です。海外からCBD商品や原料を輸入する際には、成分分析表の提出が義務付けられています。これを自社サイトで公開している、もしくは問い合わせた時に開示してくれる企業であれば信頼できるでしょう。
2つめはオーガニック表記の有無。大麻草は土壌の影響を受けやすい植物です。有害物質が含まれた土壌で栽培されたものは危険性も高まるため、生育環境は非常に大事。オーガニックで栽培されたものであれば、安心度も高まります。
3つめは商品宣伝などで過度な表現をしていないかどうか。CBDの効果や体感には個人差があります。『すぐに効く』といった表現は薬事法や景品表示法も絡んでくるため、法令を遵守している企業であれば、このような表現は用いないはずです」
日本で製造される商品の場合、どんなCBDを原料として輸入し用いているかも判断材料の一つとなる。例えば、デンマークのENDOCAというCBDオイル企業では、自社でオーガニック栽培を行ない、種子から製品まで生産管理を徹底。世界的にも高い評価を受けている。こうした企業の商品であれば安心して使うことができるだろう。
法改正が実現すれば「グリーンラッシュ」に
「日本で販売されているCBD関連商品は、化粧品やサプリメント、食品が主流ですが、化粧品であれば薬機法、食品であれば食品衛生法というように、遵守しなくてはならない法律がいくつもあります。VAPE用CBDリキッドは雑貨として扱われるため、粗悪なものがあっても消費者の側から判断しづらいところはありますが、化粧品や食品であれば、雑貨と比べるとそのリスクも少ないでしょう」
最近では、CBDだけでなくCBNという成分にも注目が集まっている。THCが酸化によって分解されたときに形成されるものだが、依存性や中毒性はない。特に鎮痛や鎮静効果が高く、睡眠の改善にもいいといわれている。わずかしか採取できないためCBDよりも高価だが、CBNも配合された商品であれば、さらなる効果が期待できそうだ。
新城弁護士は、自身もCBD愛好者の一人として、安全かつ効果的な商品であることを実感しているという。
「仕事や家事、育児などが忙しすぎて、休息がしっかり取れていない人は多いと思います。寝る前にCBD入りのグミやオイルを摂っておくと、睡眠時間が少なめでも翌朝スッキリした感じがします。日常的に服用していて、しばらくやめた時期があったのですが、その時になって改めて、『やっぱりCBDの効果があったんだな』と感じました。
人間にはストレスに晒されても、体をいい状態に保とうとするホメオスタシスという機能があります。CBDにはこのホメオスタシスをサポートする役割もあるので、上手に取り入れたいですね」
大麻取締法の改正が実現すれば、ますます注目を集めることになるCBD関連商品。日本に「グリーンラッシュ」が訪れるのもそう遠くはないのかもしれない。
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