令和のいま、「車載型のカーナビ」に何かを期待している人は一体どれほどいるだろう。値段は高い割に、動作はモッサリ、目的地を設定するだけでもひと苦労……もはや車載ナビを「現在地がわかる映像・音楽プレーヤー」程度に考えている人も多いのかもしれない。
それでも新車を購入する際には、「何もないのも不安だし、まぁ安いものを付けておこう」と、実機を見ずにカタログ上から選んでいるのが実情ではないか。
しかしよく考えてみれば、安くても10万円前後はするオプションを、ほとんど比較検討もせずに選ぶというのも奇妙な話だ。スマホやPCと同じような値段を払うなら、もう少し、積極的に選びたくなるような商品はないものか……。
長年ナビに対してヤキモキしてきた筆者だが、この度パイオニアが展開する“カロッツェリア”ブランドから発売されたばかりの最新型「楽ナビ」を取材する機会に恵まれた。カー用品店やECサイトなどで販売している、いわゆる「市販ナビ」の人気製品だ。
なんでも、今年のモデルチェンジで「新たな次元」に踏み込んだというのだが……ともあれ事実を確かめようと、半信半疑のまま集合場所へと向かったのだった。
ボンヤリ液晶からの脱却
到着したパイオニアの担当者・藤田氏と挨拶を済ませ、早速実機を起動してもらう。画面が表示された瞬間、ディスプレイの鮮明さに思わず「え、こんなキレイなんだ」と声が漏れた。ダッシュボードからせり出した大画面もあいまって、地図の表示がクッキリと明るくなめらかなのだ。
筆者のリアクションに、藤田氏はニコリと頷き解説してくれる。
「この楽ナビは『画面のキレイさ・見やすさ』を重視しており、価格的にも幅広いラインアップを用意していますが、全ラインアップに視野角の広いIPS方式のHDパネルを搭載しています。中の地図データやメニュー画面もHD用に描き起こしていますので、『HDなのにナビの画面がボンヤリしていてあまりキレイじゃない』というガッカリ感もないんですよね」(藤田氏)
これだけで印象が好転してしまうのは単純だが、やはり「目に入ってくる情報の鮮度」は重要なのだろう。「パッと見てわかる」というだけで、なにやら安心感があるのだ。
待望の「オンライン検索」問題の実用性は
「どうぞ自由に触ってみてください」と藤田氏に促されるまま、ひととおりタッチパネルで地図を動かしてみると、画面が指先の動きをシャープに追従してくれる。操作性は良好だ。
さらにメニュー画面も、スマートフォンやタブレットのように洗練された印象だ。上部の「行き先を探す」という検索バーをはじめ、「どこで何ができるのか」が一目瞭然である。
「今回の楽ナビはインターフェイスを一新し、『高機能を使いやすく』というコンセプトをさらに追求しました。象徴的なのが『お出かけ検索』ですね。この検索バーひとつで、電話番号や施設名称はもちろん、住所の一部や思いついたキーワードでの検索もカバーしています。これによって従来の『○○検索から探す』という少し煩わしさを感じる方法から、より直感的な検索が可能となりました。
オンライン検索(*1)にも対応しているので、たとえばスマホで検索するように『東京 観光』といったアバウトなキーワードでも関連性の高い施設を表示してくれますし、カーナビ本体には収録されていない最新スポットなども検索できるようになりました」(藤田氏)
(*1 )「オンライン検索」を含む楽ナビの各種オンライン機能は、ネットワークスティック同梱モデルであれば購入後すぐに利用可能(通信期間3年分付)。非同梱モデルの場合は別途ネットワークスティックを購入するか、スマートフォンのテザリングなどを用いることで利用可能となる。
実際にいくつかのキーワードで検索してみると、「京都 名所」「浜松 うなぎ」などの定番ワードはもちろん、「家系ラーメン」など少し意地悪なワードでも納得のいく結果を表示してくれる。やはりオンライン化の恩恵は大きく、使ってすぐに便利さを実感できるレベルだった。
フリック入力で「文字入力のストレス」も大幅改善
検索時の文字入力もスムーズだ。さらにレスポンスの上がったフリック入力が、予測変換とともに入力スピードを大幅に向上させてくれる。レスポンスのよい操作感でサクサクと入力できるし、地名や食べ物などの頻出ワードはたいてい打ち終わる前に候補が表示される。
従来のカーナビといえば、漢字変換もされず、誤入力を繰り返しながら検索し、それでも目的の施設が見つからず……ストレスが溜まる場面も多かっただけに、これは嬉しい変化である。
周辺駐車場の空き情報もリアルタイムで反映
しかし、オンライン検索やフリック入力は、スマホユーザーにとって今や「当たり前」の機能であり、決定的なアピールポイントにはならないかもしれない。
ところが使っていくうちに、こうした「スマホライクな使い勝手」によって、長年カーナビを作りつづけてきた「パイオニアならではの機能」がひときわ便利に感じられてくる。まずありがたいのが、目的地を検索した際のきめ細かな施設情報だ。
「通信機能によって、ガソリンスタンドの価格情報や、コインパーキングの空き情報、目的地の天気といった情報を表示できます。そのほかにも、『コンビニに駐車場があるか』『営業時間内なのか』などドライブ中に知りたい情報がパッと見てわかる工夫をしているんですよ」(藤田氏)
筆者が個人的に惹かれたのは、「施設の入口」を目的地として設定できる機能である。
知らない場所に行く際、「施設周辺でナビの案内が終わってしまう」というのは多くのドライバーに共通する悩みだろう。車を止められる場所がわからずオロオロと迷っているうちに、なにやら同乗者から不満のオーラが……駐車場などの入口まで案内してくれる楽ナビであれば、そんな「あるある」ともオサラバだ。
ルート案内中の「寄り道」がカンタンに
とはいえスムーズに目的地を設定できたとしても、ドライブが計画通りにいかないこともある。たとえば「トイレに行きたくなった!」「喉が渇いた!」「ガソリンないじゃん!」などなど、突然の要求に慌ててしまうケースも多いものだが……。
「コンビニやガソリンスタンドなど、定番の立ち寄り地は先ほどご紹介した『Doメニュー』に大きなボタンを用意したので、ワンタッチで検索できます。ルートを引いている状態であれば、施設が道路のどちら側にあるかもわかるので、『コンビニに寄りたいけど右折で入りにくい』といった状況も回避できますよ」(藤田氏)
家族との旅行中、パートナーや子どもから突然予定とは異なる施設に寄ることをせがまれ、迂回路を考えるストレスから徐々に険悪なムードに……そんな心配もなさそうだ。
料金と時間が「ちょうどいい」6ルート探索
料金や到着時間など、さまざまな観点から複数のルートを提案する「6ルート探索」も、楽ナビならではの特徴のひとつ。
6つの候補を素早く一覧表示することで、一目でルートを比較できる。単純に料金や到着時間を優先するばかりではなく、状況にあわせて「ちょうどいい具合」を選べる点は車載ナビならではのポイントだ。
「信号の数」で曲がるポイントをお知らせ
肝心のルート案内の機能はどうか。距離感を掴むことが苦手な筆者は、「300m先を左折」などと言われても、しばしば曲がるポイントを間違え、同乗者から冷たい視線を感じることがある。
ところがルート案内を開始してすぐに、この懸念は吹き飛んでしまった。「2個めの信号を左方向です」と、信号を目印に案内がなされるのだ。
「新機能の『信号機カウント交差点案内』は派手な機能ではありませんが、ルート案内中のわかりやすさを求めて導入しました。音声アナウンスのタイミングを車速に応じて変えるなど、運転しながら自然に使えるよう調整を徹底しています」(藤田氏)
違和感のない使い心地は、細かい部分に対する惜しみない企業努力の賜物だ。このような進化は海外のカーナビには見られず、日本独自のものだというが、そこには「ドライブ中のイヤなムード」を未然に防ぐ親切心が至るところに散りばめられているのである。
こうした「かゆいところに手が届く」機能の数々は、かつて世界で初めて「市販GPSカーナビ」を世に送り出したパイオニアならではのものだろう。長年にわたりユーザー目線の開発・改善を積み重ねてきたノウハウが、今回の楽ナビでも存分に発揮されていることが実感できた。
地図更新は「車に乗ったまま」
オンライン化によって、長らくカーナビの弱点だった「地図の古さ」や「更新の面倒さ」も解消されている。地図などのデータ自動更新(*2)に対応し、通知に同意するだけでアップデートが開始されるので、「新しいデータがいつリリースされるか」を気にする必要もない。
(*2) ネットワークスティック同梱モデルは最大3年間無料、非同梱モデルは最大1年間無料
わざわざSDカードを引っこ抜き、長時間かけてパソコンからデータをダウンロードし……そういった手間を一切かけずに、車に乗ったまま地図や機能を最新状態にできるのだ。
ネットも動画もつなぎ放題。車内Wi-Fiのありがたみ
車載のカーナビに対し、「音楽や映像などのエンタメ機能」を期待する人もいるだろう。筆者には2歳の子がいるが、長距離ドライブや渋滞の際に「YouTubeを流せれば……」と何度思ったかわからない。
しかしナビはスマホのミラーリングに対応していないし、通信容量も気になるし……筆者に限らず、せっかくのオンラインコンテンツをドライブに活用できていない人は多いのではないか。
「今回の楽ナビはHDMI入力によるスマホのミラーリングに対応し、さらにシリーズで初めて容量無制限の車内Wi-Fiの機能を搭載しています。別途『docomo in Car Connect』というサービスへのお申し込みが必要(*3)ですが、お得な料金で通信量を気にせずオンラインコンテンツを楽しめますよ」(藤田氏)
車内で小さな子にオンラインの映像を見せることはもちろん、少し大きくなれば各自のデバイスで好みのコンテンツを楽しむなど、退屈になりがちな車内の過ごし方にも自由度が生まれるはずだ。
「家族の思い出」を支える優しいカーナビ
こうして見ると、家族旅行における「退屈感」や「険悪ムード」のいくつかは、優秀なナビによって解消できるように思えてくる。オンラインに対応した楽ナビの豊富な機能は、間接的に家族の思い出を支えてくれるのかもしれない。
取材を終えた筆者は、これまでドライブ中に生じた家族との不和の数々を思い返し、気づけば帰りの車中で「次は市販のナビも選択肢に加えてみるか」と検討しはじめているのだった。
提供:パイオニア株式会社