男性にとって外観の悩みの代表でもある薄毛。近年では医学の進歩により、さまざまな治療ができるようになってきた。特に男性型脱毛症(AGA)治療については情報があふれており、ウェブで検索するとたくさんのクリニックがヒットする。コロナ禍を経た最近はオンライン治療も盛んになっているが、適切な薄毛治療を受けるためには何に気をつけて受診先を選べば良いのか、AGA治療専門クリニックの銀座総合美容クリニック(銀クリ)に話を聞いた。
薄毛は治療方法のある“病気”
主に成人男性に起こる進行性の薄毛や抜け毛=男性型脱毛症(AGA:Androgenetic Alopecia)は、“症”がつくことからも分かるとおり、病気のひとつだ。
一般的に約10万個あるとされる毛穴から生えている毛髪は、2~7年ほどかけて毎日少しずつ伸びる。そして、1日に約100本程度抜ける代わりに同じだけ生え始めることで髪の毛の総量を維持する──という生え替わりサイクルに何らかの変調が起きると、髪の毛は薄くなってしまう。
AGAの場合、この生え替わりサイクルに異常をきたす大きな原因は「髪の毛の成長を抑えて髪の寿命を短くする“悪玉男性ホルモン”=ジヒドロテストステロン(DHT)ができてしまうことです」と銀クリは解説する。
「この悪玉男性ホルモンは、テストステロンと呼ばれる男性ホルモンに“5αリダクターゼ”という酵素がはたらくことで作られます。現在は、この過程を抑えることで悪玉男性ホルモンのはたらきを減らし、髪の毛の生え替わりサイクルを正常に近づけ薄毛の進行を抑える薬があります。また、髪の毛を作り出す毛母細胞を刺激して細胞分裂を活発にし、発毛を促す薬も治療に用いられています(※)」(銀クリ)
※前者の薬の例=フィナステリド、デュタステリド。後者の薬の例=ミノキシジル。
薄毛治療に重要な“PDCAサイクル”
比較的新しい医療分野ではあるものの、医師・関係者の尽力によりさまざまなアプローチが行われ、治療の幅も広がりを見せている薄毛治療。さらに近年ではITの発達によって、オンライン専業クリニックなどさまざまな形態のクリニックも増えてきた。しかし、ネット上の情報は玉石混交。数多くの選択肢の中から適切なクリニックを探すことはなかなか難しいものだが、自分に合った治療を受けるためにはどういったことに着目して選べば良いのだろうか。
「発毛治療に使用する薬剤のバリエーションが多くないためか、『薄毛診療は簡単なもの』と誤解する方がいますが、全くそんなことはありません。AGAは先端医療であり、“ちょっと改善が難しめの病気”と考えると実状によく合います。
そのため、治療を始める前に、まず患者さんの状態をきちんと把握しなければなりません。現状やこれまでの変化について話を聞く『問診』、毛量や密度をはじめ頭皮の状態なども確認する『視診』、髪の硬さなど視覚で得られない状態を確認する『触診』、これら3つの手法を用いた丁寧な症状確認が必要です。また、血液検査などで健康状態を確認することも、現状を把握して治療計画を立てるために非常に重要です。
患者さんの状態をきちんと評価し策定した治療計画をもとに、経過に合わせ薬の用量を見極めたり、薬の効果を補強するための成分を合わせたりと微調整をしながら個別に治療を進めることが、薄毛を治す一番の近道になります。ビジネスの世界でよく言われてきた“PDCAサイクル”をイメージしていただくといいかもしれません。計画、実行、確認、調整が必要ということですね」(同前)
銀クリでAGA治療を行なう場合は、まずは問診から始まる。既往症や服用中の薬、生活習慣、毛量がどのように変化したか、そしてどのくらいの毛量になりたいか──など、患者本人の考えについても話は及ぶ。次に視診と触診へ進み、症状や髪の毛の密度、太さなどをマイクロスコープで把握。頭皮の固さ、毛髪のボリューム、生え際やつむじの位置などは実際に触って状態を知る。こうして治療計画を立ててから、治療や薬の処方を行なっているという。
「治療薬の中には、血圧の高い方が安易に服用すると動悸などの副作用が出るものなどもありますし、効果についても順当に発毛効果が見られる場合もあれば、なかなか効果が現れない場合もある。中には、効果が出てもそれが維持できない場合もあります。
そういった患者さんごとに異なるさまざまな症状や治療への反応に対して治療効果を期待するためには、患者さんの体調面なども含めて細かく確認・検証しながら、薬の濃度や服薬方法を切り替えたり、他の薬剤を追加して効果のブーストアップを図ったりといったプロセスが重要なのです」(同前)
治療開始後の丁寧なフォローやケアは、治療自体のブラッシュアップだけでなく、メンタル面においても重要なポイントだ。AGA治療の効果は日々少しずつ表れるため、患者本人は毎日の変化を実感しにくい。そういった治療を根気強く続けていくには、医師と患者が治療のゴールを共有し、副作用や、時にセンシティブな事柄も話し合える関係性を築くことが必要不可欠なのだ。そう考えると、近年よく耳にする「オンライン診療」よりも、実際に病院に出向いて治療を受けることが何よりも重要といえるのかもしれない。
病院選びのポイントは“いいとこ取り”ができるかどうか
とはいえ、実際に治療を受ける側からすればオンライン診療の利便性はやはり大きなメリットだ。多忙な日々の中では薄毛が気になってきてもなかなか時間が取れず、後回しになってしまうことも少なくないだろう。オンライン診療の登場は、そんな日々忙しく暮らす現代人にとってのAGA治療のハードルを大きく下げたといえる。
「AGAは進行性なので症状が止まることはなく、治療を早く始めるほど効果が高いです。時間が取りにくい方は、まずはオンラインでも構わないので早期に医療機関にコンタクトしましょう。その後は、治療のサイクルを正確に回して効果を出すためにも、対面治療とオンライン診療を組み合わせる手法をおすすめします。
治療が順調に進んで毛量を維持していくフェーズに入ったら、利便性の高いオンラインを主体にしても問題ありません。AGA治療は続けていくことも重要な要素なので、オンライン診療を上手に使い便利に治療することも、患者さんにとっては大切です。一方で治療する側の医療機関は、オンライン診療によって患者さんの症状の正確な確認がどうしても難しくなりますから、その点を補完するだけの多くの治療ケーススタディを過去の対面診療で持っていること、そしてそれを診療に反映させることが必要です」(同前)
初めての町を歩くなら詳しい地図を持ち、険しい山に登るなら信頼できるガイドに同行を依頼する……こういった伴走者の必要性は医療でも同じだ。AGA治療のような保険外診療を実施するクリニックの中には、患者が自己申告・記入した問診表とオンラインでの簡単な医師との顔合わせのみで、薬のパッケージセットを定期的に郵送する“サブスクリプション治療”的な対応を行なうところも多い。
しかしながら、AGA治療は同じ薬をただ飲み続ければ一様に効果が出るというような簡単なものではない。山道に上り坂や下り坂があるように、治療の過程においては、なかなか効果が見られない時期、順調に発毛効果がみられる時期、生えた髪を維持する時期などさまざまなステージが存在する。また、比較的新しい治療法のため、知見がそれぞれの医療機関に個別に蓄積されており、クリニック選びは非常に重要だ。多くの診療実績を積んだクリニックや医師にアドバイスを受けながら伴走してもらうことは必須だろう。
AGA治療は一生に一度のもの。対面とオンライン、両方の診療手法の“いいところ”を臨機応変に組み合わせられる医療機関を選び、早めの治療を心がけたい。
INFORMATION
銀座総合美容クリニック
公式サイト:https://www.gincli.jp/
(東京院)東京都港区新橋1-9-5 KDX 新橋駅前ビル 4~5階
(大阪院)大阪市北区曽根崎新地1-4-20桜橋IMビル15階
※診療時間(完全予約制)
月・火・木・金・土 11:00~20:00
日・祝 11:00~19:00
休診日:水曜日
料金:初月1000円、2カ月目以降は、AGA治療内服薬2000円~1万9250円(※保険外の自由診療)
相談・予約は東京・大阪共通のフリーダイヤル(0120・972・335)か、公式サイトから