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出川哲朗さんの英語はなぜ伝わるのか…MLBで苦労した元プロ野球選手が見つけた「本当に伝わる英語」

source : 提携メディア

genre : ライフ, スポーツ, ライフスタイル

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ほとんど誰とも話せない、話さない状況が1週間程続くと、いろいろなことが頭を駆け巡るようになりました。

「自分はここまで来て何をしとるんや……」
「いろいろと知ることはできたけど、これから先は何が得られるんやろう」
「収入がなくなる道を選んでまで、ここに来た価値はあるんか?」
「何もできずに過ごしとるけど、いまの無給の俺は、日本で給料をもらっとる状況を想定したら実質1日いくら損をしてここにいるんやろう」
「家族に迷惑かけてまでここに来て、この日々は意味があるんか?」
「この状況があと7カ月程も続くことに耐えられるんか?」

「明日の練習に行きたくない……」

自分の理想と現実がかけ離れているのを痛感し、自問自答、後悔、情けなさ、たくさんのマイナス思考に支配されました。そうやって考えてばかりいると、体力的には疲れていないのに精神的にすごく疲れてきます。宿舎に帰って「英語を少しでも勉強しなければ!」と思っても、球場でのストレスから解放された状況では何もやる気が起きませんでした。妥協の連続で何も勉強もできず、これがまた自分のマイナス思考に拍車をかけ、どんどん自己嫌悪に陥ってしまいました。

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一番辛かったとき、宿舎の中でふと、こんな言葉が頭をよぎりました。

「明日の練習に行きたくない……」

この瞬間、本当に涙が出そうになりました。自分の覚悟はその程度だったのか。これだけ多くのものを犠牲にして自分の夢を追いかけてきた中で、「行きたくない」なんて思うようになることを想像できなかったのです。もう情けなくてしょうがない。いままでギリギリの線で持ちこたえていたつもりだったけれど、どん底まで落ちました……。

私が行ったマインドセット

けれど、そこまで落ち込んでしまったのと同時に、何かが吹っ切れました。僕はホークスでは投手コーチを統括する立場でした。それがアメリカでは研修生扱いです。いわゆるトップの立場から見習いの立場になることなんて、職業を変えない限りはまずあり得ないということに気づいたのです。