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「噓でしょ!?」「厄年?」それとも……。直木賞作家・窪美澄さんの身に起きた最近の出来事を「星占い」「Audible」と共に振り返る

Audible『石井ゆかりの星栞 2024年の星占い』

PR提供: Audible

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 20代~40代の男性が、スキルの習得や自己啓発を目的として通勤中に利用するイメージが強かったオーディオブックサービス。近年のライフスタイルの変化に伴い、最近は小説などを楽しむ利用者が増え、語学勉強に熱心な層や主婦層にも広がり始めている。

 なかでも、クオリティの高いナレーションが特徴のAmazonオーディブル(以降、Audible)は、いつでもどこでも気軽に音声でコンテンツを楽しむことができる世界最大級のオーディオエンターテインメントサービスだ。実は、星占いなど小説以外のコンテンツも充実しており、シチュエーションや周囲を気にせず音で楽しむことができると利用者からの支持も高い。

 なぜいま、「星占い」なのか。星や星座をモチーフにした小説『夜に星を放つ』で直木賞を受賞された作家の窪美澄さんに、星占いや、耳で聴く物語の魅力について聞いた。

Amazon オーディブル(Audible)とは
現在、世界11ヵ国で展開されるオーディオエンターテインメントサービス。Audible会員であれば月額1,500円で、小説、エンタメ、ビジネス、ポッドキャストなど12万以上の対象作品が聴き放題で楽しめる。移動中や作業中など、いつでもどこでも読書ができ、オフライン再生も可能。在宅勤務など、近年のライフスタイルの変化もあり、性別や年齢を問わず、幅広く利用されている。また、従来の「男性誌」「女性誌」という枠を超え、ジェンダーレスにコンテンツが楽しめるのも大きな魅力となっている。URL  https://www.audible.co.jp/

作家 窪美澄さん
作家 窪美澄さん

──窪さんはここ最近「星占い」を意識されているそうですね。何かきっかけがあったのですか?

 去年から今年にかけて、本当に「嘘でしょ!?」と言いたくなる出来事が続きました。例えばX(旧Twitter)のアカウントを乗っ取られたり、来るはずの新幹線が駅の手前で停車してしまって、ホームで一人、何時間も待たされたり……。

 ほかにも原稿を書くときに今まで感じたことのないストレスを感じることもありまして。「厄年?」と思ったときに、ふと「サターンリターン」という言葉が浮かびました。

──「サターンリターン」? 何ですか?

 サターンリターンは、簡単に言うと約30年に一度やってくるサターン、つまり土星による人生の転換期のことです。この時期は、乗り越えるべきテーマが突きつけられるとも言われています。

──「厄年」みたいなものだと考えればよいのでしょうか。

 サターンリターンを日本の厄年のように解釈するのは少し違うと思うのですが、「もしかして、今つらいのはサターンリターンのせいもあるのかも!?」と思ったら、ほんの少し心が楽になって。最近はあまり星占いに左右されない生活を送っていたのですが、改めて「星は正直だな」と強く感じました。

──窪さんは作家になる以前にライターとして活動され、星占いの本も企画担当されたそうですね。占いがご専門だったのですか?

 いいえ。ライター時代は妊娠、出産、子育ての記事を多く書いていました。でも、「占いと子育てが結びつかないかなあ」という思いはありました。

 というのも、ちょうど自分の子育て時期と重なっていたので、子どもの特性をホロスコープで見ることで子どもへの理解がもっと深まるのでは、と思ったからです。

 そこで、とある占い師さんが開かれていたホロスコープを読む初級講座に参加して「こういう本を作りたいのですが」とお話ししたところ、共感してくださって。企画書を作り、その先生の監修で本を出すことになりました。『ムーンチャイルド占星術』(主婦の友社)という本でした。

──ご自身のこれまでの人生においても、重要な決断時や困ったときなど、占星術を参考にされた経験はありますか?

 人生の転機に占いを参考にしたことはありませんが、先ほど申し上げた占い師さんの教室に通っていたときに、自分を占っていただいたことならあります。

 その頃はライターでしたが、将来、ぼんやりと小説が書けたらいいな、くらいに思っていて。まだ誰にも話したことはなかったのに、その先生が「この時期に本が出るよ」とズバリおっしゃったんですよ。時期は少しズレていましたが、「私が自分の小説を出したいと思っていたことが、なんでわかったの?」とすごく不思議でした。

──そうお聞きすると、窪さんの直木賞受賞作『夜に星を放つ』が、星座や星座の物語をモチーフにされているのも、運命のように感じます。そもそも、今作ではなぜ星座をモチーフにまとめようと思われたのですか?

 私は、短編を書くときには何かひとつモチーフを決めています。『夜に星を放つ』のなかでいちばん最初に書いた短編「銀紙色のアンタレス」は、ひと夏の少年の恋を書こうと思って図鑑などを調べていて、夏の空といえば「夏の大三角」「さそり座」「アンタレス」だよな、と浮かびまして。連載ではなかったのですが、連作短編なので、次の作品も星座をモチーフに書いてみようと決めて、書き進めていきました。

「アンタレス」は赤く光る星ですが、登場人物が思いを寄せる人物が、夏の大三角の「アルタイル」(銀色に光る星)と勘違いするシーンがあります。この勘違いが二人の心のすれ違いをあらわしているとも思って、タイトルを「銀紙色のアンタレス」としました。

──アンタレスとアルタイルのお話だけでもロマンチックですね。人間はなぜ、空に浮かぶ「星座」の伝説に魅入られるのだと思いますか?

 人間は物語を欲する生きものだからだと思います。空の変化や星の配置など、そういった自然現象から、自らの世界観に則った何かしらの物語を引き出す、というのは人間の根源的な欲望なのではないでしょうか。

 夜空では私たちに計り知れないことが起こっているけれど、何かそこに意味がある。「星の配置がこうだから、今、こんなことが起こっている」、と自分自身を納得させるためにも、星座の伝説や物語が必要だったのではないかと思います。

──最近は重要な決断を迫られる男性のビジネスパーソンの間でも、コンサルかカウンセリングのようなイメージで占星術を利用する人が増えているそうです。窪さんにとっての星占いは、どのような存在ですか?

 なんだか行き詰まり感を持ったときや、ちょっと違う角度から自分を人生のぞいてみようかというときに参考にするアドバイス、といったところでしょうか。言葉を生業にしているものですから、言葉に説得力がある占いや、あたたかみのあるアドバイスに惹かれますし、そういう言葉に触れると、ふっと肩の力が抜けます。しいたけ占いのしいたけ.さんや石井ゆかりさんの占いは、時々のぞいています。

──石井ゆかりさんは幅広い年代層から支持されています。なぜ石井ゆかりさんの占いは、年齢・性別問わず、幅広い層に届くのだと思われますか?

 こんなことを言うとおこがましいのですが、石井さんの言葉はとても洗練されていて、占いの言葉もやさしいですよね。読んでいて暗い気持ちになったりもしませんし、本当にそっと励ましてくださる。そういう占いだからこそ、好きな方が多いのかなと思います。

 実は、星を読むことと物語を作ることは、とても似ていると感じています。星占いの「言葉をつくして星の関係性を読む」という行いが、物語のなかで人間同士の関係性を描くことに似ているのではないかと思っています。

──星占いは人生を劇的に変えるための魔法ではなく、見逃していた光に気づくためのツールと考えるなら、星占いも小説も人生を豊かに生きるためのアイテムと言えそうです。

 石井さんの星占い『星栞 2024年の星占いシリーズは、Audibleで、しかも本人の声で聞くことができます。いま、音声コンテンツはさまざまに進化していますが、「占いをする本人の声で聞ける星占い」について、どう思われますか?

 石井さんの声はAudibleで初めて聞いたのですが、落ち着いた女性という感じでとても素敵でした。

 声には、その方の個性や人間性が滲むので、占いの言葉の解像度がぐっと上がるような気がします。なんとなく言葉がより自分の深いところに響くのではないかという気がするので、眠る前に聞きたいですね。

──窪さんの作品『夜に星を放つ』もAudibleで聞くことができます。読者の中には、Audibleで初めて窪さんの作品に触れた方もいらっしゃると思いますが、ライフスタイルの変化に伴い、最近はAudibleで小説を楽しむ方の割合も増えています。耳で聴くコンテンツ、Audibleについてどのように思われますか?

「耳から入ってくる物語」ということそのものが、私にとってはとても新鮮でした。

 座って本を読むにしても、あるいは通勤電車のなかなどで読むにしても、ある程度の余裕がないとできませんよね。でもAudibleであれば、家事をしながらや、子育ての合間といった隙間時間にも、本に接することができるのではないかと思いました。

──窪さんの小説は、主人公が大ハッピーエンドになるというよりも、ちょっとした可能性にほのかな光を見出す作品が多く、やさしい言葉で綴られた占いのようなまなざしを感じます。

 最後に、窪さんがどのような想いで作品をお書きになっているのか、お聞かせください。

 勧善懲悪や、大ハッピーエンドのお話は、読んでいておもしろいですよね。ただ自分が小説を書くときには、本を読んで現実世界に帰っていく読者のことをすごく考えてしまいます。大ハッピーエンドは即効性のあるお薬という感じで、そのときは気持ちも上がるのかもしれませんが長くは続かない気がして……。ですから、「現実世界と地続きのところでほんの少し元気になれる」とか、「物語の最後を思い出すたびにふと口角が上がる」というような、長く効くお薬、あるいはお守りみたいな作品が書けたらいいな、と思っています。

【窪美澄さん最新作『ぼくは青くて透明で』文藝春秋 定価1,760円(税込)2024年1月16日発売】

◆Amazonの聴く読書「Audible」
いつでもどこでも気軽に音声でコンテンツを楽しむことができる、世界最大級のオーディオエンターテインメントサービスです。プロのナレーターや俳優、声優が読み上げる豊富なオーディオブックや、ニュースからお笑いまでバラエティあふれるプレミアムなポッドキャストなどを取り揃えています。日本向けの会員プランでは、会員特典として12万以上の対象作品を聴き放題でお楽しみいただけます。再生速度の調整やスマホでのオフライン再生にも対応。
https://www.audible.co.jp/

◆多機能で便利なAudible!
・0.5~3.5倍速まで、0.05単位で再生速度が変更可能
・スリープタイマー機能
・ストリーミング・オフライン再生

◆おすすめの利用シーン
・通勤・移動中に
・運動をしながら
・家事をしながら
・おやすみ前に

◆〈本人〉が語りおろすポッドキャスト番組、石井ゆかりの『星栞2024年の星占い』

2023年度版Audibleも大好評、人気星占いライター石井ゆかりによる占い文庫本『星栞 2024年の星占い』(幻冬舎コミックス)。今年もAudible限定オリジナルポッドキャスト番組で帰ってくる。

窪美澄(くぼみすみ)
1965年東京都生まれ。作家。2009年「ミクマリ」で女による女のためのR-18文学賞大賞受賞。2022年『夜に星を放つ』(文藝春秋)で第167回直木賞受賞、週刊文春WOMANで連載され、話題を呼んだ『ぼくは青くて透明で』文藝春秋)が2024年1月16日発売。

構成:相澤洋美
写真:佐藤亘