小学校1年生にして落語に魅了され、中1の時に足を踏み入れた寄席で故柳家小三治に夢中になり、中2で弟子入り志願の手紙を書いたという柳家三三さん。高校卒業後に夢叶って入門を果たすと、二ツ目時代からその噺の上手さに注目が集まる。2006年には31歳で真打に昇進。以来、師匠・小三治譲りの本格派として、人気・実力ともに当代屈指の存在として落語界をリードし続けている。
料理の邪魔をせず、けれどしっかり個性を感じる焼酎ですね
三三さんと師匠の共通点のひとつが、お酒にあまり強くないこと。
「小三治も私もうんとお酒が弱いけれど、味わうのは好きというのも共通点です。もうちょっと酔わないでいられたらもっと楽しめるのになって思うこともよくありますね」
そう笑う三三さんが最近出会ったのが「薩州 赤兎馬 玉茜」だ。「薩州 赤兎馬」は、明治元年創業の伝統を持つ薩州濵田屋伝兵衛が新たなコンセプトで生み出した、華やかでクリアな味わいの本格芋焼酎。その「薩州 赤兎馬」に、厳選された良質なさつまいも「タマアカネ」を使用した焼酎をブレンドすることで、金木犀(キンモクセイ)を想起させるフローラルな香りと旨味が絶妙に調和した、飲み応えのある味わいに仕上げている。
「水割りでいただくととてもまろやかで、ほんのりとした甘みがあり、本当に金木犀のような香りが広がりますね。昔の芋焼酎って匂いが強くてアルコールがガツンと来るようなイメージだったのですが、これはそういうところが一切ない。角の立たない、誰でも親しみやすいお酒だなと。芋焼酎のイメージを良い意味でくつがえされました」
食べることも大好きだという三三さん、この「薩州 赤兎馬 玉茜」と相性の良い料理は何だろうと考え、まずは肉料理を合わせてみたという。
「肉料理の強い味と焼酎の風味がぶつかっちゃうかもしれないとも思ったのですが、『薩州 赤兎馬 玉茜』は一切料理の邪魔をしないんですよ。だからといって印象に残らないというわけではなく、料理の味わいと一緒になることで『赤兎馬』らしい個性がいっそう楽しめる。冷え込んだ晩はおでんと一緒にいただきましたが、まろやかな芋の風味とおでんの出汁がまた良い相性で、こちらも楽しませてもらいました」
そこでふと、「もしかするとそれは、噺家に通じるものがあるかもしれませんね」と三三さんはつぶやいた。
「寄席ではさまざまな出番がありますが、どのタイミングでもすっとその場の雰囲気を読み、流れを壊さないベストなパフォーマンスをするのが仕事だと思っているんです。演者の個性を押し付けるのではなく、極端に言うと『あの噺面白かったなぁ、誰がやったんだっけ』って言いながらお客様が帰っていくぐらいでいい。かといって噺家の印象が何もないっていうのはやっぱり寂しいですから、『あぁ、三三がやったんだった、やっぱり面白いなぁ』なんていう程度の存在感が残るのが、私の理想といえば理想かもしれません」
登場人物一人ひとりが生きる様を語る。それが今の私の落語です
端正で流れるような語り口と臨場感のある人物描写で知られる三三さん。高座で酔っ払いを演じていても、盃に本物の酒が入っているのではないかと思わせるほどのリアリティがある。
「酔った仕草だとか話し方だとか、形だけなぞってみてもそれは真似に過ぎませんから。こういう過程でだんだんこういう心持ちになっていくんだなという内面を、自分で経験したり、他の人が飲む様を観察したりして理解すると、それがちょっと垣間見えるようになるんでしょうね。あとね、僕の場合お酒を飲む仕草をすると、口の中が本当においしい感覚で満たされるんですよ。自分でも不思議なんですけど、本当に味わってるんです」
それもまた、経験によるものではないか。そう尋ねると、「確かに経験の蓄積というのはあるかもしれませんね。同じ噺をするのでも、若い頃とはちょっと違ってきたなというところはありますから」と答えが返ってきた。その変化には、師匠小三治から言われた言葉が影響しているかもしれない、と。
「噺家になってすぐに言われたのが、『大きな声で元気良くはっきり喋れ』ということ。その後3年ほどで二ツ目になるんですが、その頃『お前、何考えて落語やってるんだ』と聞かれたんで、『はい、大きな声で元気良くはっきりと、です』って答えたら、『いつまでそれやってんだ』と(笑)。『大声で喋っているだけじゃ落語に聞こえない。落語に聞こえるよう、落語らしく喋れ』って言われまして」
落語らしく喋れとはまた難しいお題だが、10年ほどたち、三三さんが真打に昇進した時、師匠は言った。「誰が聞いても落語らしく聞こえるようになった。あとは、噺に出てくる人物を、ちゃんと一人の人間として語れるようになれ」。
「言われた時は理解できませんでしたけど、時間がたつにつれ、だんだんとその意味が分かってきたような気がします。古典落語には誰でも知っている噺が多くて、どれもすごく良くできた物語なんです。言い方は悪いんですけど、登場人物たちはその噺を成立させるコマのようなもので、私も若いうちは無意識のうちにそう考えていたように思います」
でも、本当はその逆なんですよ、と三三さん。
「登場人物には物語を作るなんてつもりは全くなくて、思いもよらないことに巻き込まれてただ一生懸命動いているうちに、後から見たら良くできた物語になっていたっていうだけなんです。喋ってる方も聞いてる方もこの先どうなるか知っているけれど、彼らだけがそれを知らない。だから落語って面白いんですよ、多分。正解かどうかは分かりませんが、物語より人間が面白いのが落語なんだというつもりで喋れと、うちの師匠は言いたかったんじゃないかな。今は私自身が高座で登場人物一人ひとりになって、遭遇した場面をリアルに体感しながら、しかも楽しんで喋れるようになってきたと思います」
コンパスのように軸はブラさず、片方の針で新たな方向を探す
三三さんは、あまり断定的なことを言わない。「言い切ってしまうと責任が持てませんから」と笑いながら、慎重に言葉を選んで問いに答える。最後に「三三さんにとって本格とは?」と質問した時も、「うーん、それに答えるのはまず無理だなぁ。落語にしたって、お客様を惹きつける演者はみんな本格だと思いますし」と苦笑い。
ですが、と三三さんは「薩州 赤兎馬 玉茜」のボトルを見ながら言葉を発した。
「この酒蔵の焼酎づくりを見ていると、コンパスを連想しますね。コンパスの一方の針がしっかりと地面に根ざし、どんと本質から動かずにいれば、もう一方の針はどんな方向でもどんな角度にでも動いていいんだと。自由にフレキシブルに動いて進化し、でも軸がブレないというものが、人から魅力的に見えるものになるような気がします」
しっかりと本質に軸を置き、けれど自由に柔軟に新しい方向を探す。それはまさに「薩州 赤兎馬」という本格焼酎が目指すところだ。そして、おそらくそれは柳家三三が理想とする落語家の姿でもあるのだろう。もちろん、ご本人は決して断言しないだろうけれど。
【プロフィール】
やなぎや・さんざ●1974年神奈川県生まれ。1993年、十代目柳家小三治に入門。2006年真打昇進。平成19年度文化庁芸術祭大衆芸能部門新人賞、平成27年度文化庁芸術選奨文部科学大臣新人賞(大衆芸能部門)など受賞多数。映画・舞台などにも出演する一方、落語を題材にした映画や漫画などの監修も務める。
提供:濵田酒造株式会社 焼酎蔵 薩州濵田屋伝兵衛
https://www.sekitoba.co.jp/
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