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そのグズグズ、本当に花粉症? 日本人の2人に1人が悩む「アレルギー」、原因はもしかすると「ダニ」かも?

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 花粉症、鼻炎、ぜんそく、アトピー性皮膚炎などに悩んでいる人は多い。子供の頃にアレルギーがなくても、大人になってから発症する人も増えている。

 とくに、花粉症の有病率は今や日本人の約3割、4000万人以上。年が明けてひと月もすると春を待たずに「もう花粉が飛び始めた……」と憂鬱な顔の人が増え始め、GWが終わるまではマスクを外せない、洗濯物も布団も部屋干しの日々が続く。多くの人にとって、そんな生活が当たり前になってしまっている。

 けれども、そのグズグズ、本当に花粉が原因だろうか? ほかにも、季節の変わり目に調子の悪くなる鼻炎や、ぜんそく、アトピー性皮膚炎など……これらはすべて、アレルギーの仲間だが、実はその原因の7割に「ダニ」が関係していると言われている。

 今や日本人の2人に1人が、なんらかの「アレルギー」を持っている!

「アレルギーとは、自分以外のものが自分の身体の中に入ってきたときに、それを排除しようとする免疫の仕組みのこと。自分自身を守るための反応なのに、免疫が過剰に働いてしまうと、自分も傷つけてしまって病気になる。それが“アレルギー”です」

 そう話すのは、環境汚染物質の健康への影響についての研究が専門の、京都先端科学大学教授の高野裕久先生。

高野裕久…京都先端科学大学教授、京都大学名誉教授、京都府立医科大学客員教授。環境汚染物質を代表とする、様々な環境の要因が、ヒトや生物の健康、病気に与える影響について研究。
高野裕久…京都先端科学大学教授、京都大学名誉教授、京都府立医科大学客員教授。環境汚染物質を代表とする、様々な環境の要因が、ヒトや生物の健康、病気に与える影響について研究。

「日本で『アレルギー』が注目されるようになったのはここ数十年のことです。昔はアレルギーというのは小児ぜんそくに代表されるように子供の頃に発症し、成長するに従いだんだんよくなることがほとんどでした。

 しかし、近年では、大人になってから花粉症やぜんそくなどを発症するケースが増えてきており、国民の2人に1人は何らかのアレルギーを持っていると言われています」

花粉症、鼻炎、ぜんそく、アトピー性皮膚炎。その原因、「ダニ」かも?

「アレルギーの原因は大きく分けて食べ物、皮膚に触れるもの、空気に含まれるものなどがあります。

 空気中に含まれる物質で吸入抗原になりうるものは、花粉、ハウスダスト、カビなどがあります。イヌやネコなどペットの皮膚やフケ、排泄物や唾液のタンパク質などがアレルゲン(アレルギーの原因)になることもある。意外なところでは、ハムスターのおしっこなんかも、有名なアレルゲンです。

 アレルギーというと花粉ばかりが注目されますが、アレルギーを引き起こす原因の7割はハウスダストと、それに含まれるダニの死骸という報告もあります。花粉症で悩んでいる人でも、花粉だけが原因ではなく、実はダニがアレルゲンとなっていることも多いんです。『私、なんかいつも鼻がグズグズする』とか『よく風邪引くなあ』と思っている人も同様です。

 ダニは吸入や触れた皮膚を介してアレルギーを引き起こすことは知られていますが、消化器からでもアレルギー反応は出ます。例としては小麦粉に混入されているダニを食べてしまうことでもアレルギー反応が出るケースもあります」(高野先生)

アレルギーの原因、コナヒョウヒダニ。
アレルギーの原因、コナヒョウヒダニ。

 近年、住宅の気密性が高くなっていることもあり、ダニアレルギーは梅雨時をピークとした春~秋から、一年を通しての疾患になってきている。コナヒョウヒダニなど屋内のダニは、人を刺すことはないが、人やペットのフケや垢1グラムをエサに数十匹から数千匹が生息できる。掛け布団1枚には数十万匹、家1軒には数千万匹から数億匹のダニが住み着いているとも言われる。

 そして厄介なのが、アレルギーを引き起こすのは、生きているダニよりもむしろダニの死骸やフンだということだ。ダニのフンは小さいので、空中を浮遊して気管に入りやすく、生きているダニよりもアレルゲン活性が高い。

空気清浄機でほこりやダニが極力少ない室内環境をつくる

 布団・ソファー・カーペットなど、家の中のあらゆる場所にダニの死骸やフンが潜んでいる……想像するだけで恐ろしい状況だが、それらが巻き起こすアレルギーにはどう対策を講じればよいのだろうか? アレルギーの薬や新たな治療法も出てきているが、高野先生によると、

「薬の多くは、症状を緩和するだけで、根本的な解決にはなりません。アレルギー対策において最も重要なことは、まず『アレルギーを引き起こす物質「アレルゲン」の存在量をできるだけ減らすこと』です。

 なるべく身の回りのアレルゲンを少なくして、なおかつそれがなるべく体の中に入らないようにするというのが基本的な考え方ですね。花粉なら、体の中に入らないようマスクをすればよいですが、もっと大きさが小さいハウスダストに関しては、ほこりやダニが極力少ない室内環境をつくるしかない。具体的には、お部屋の掃除をすること、そして空気をきれいに保つこと。そのために空気清浄機が有用となりうるわけです」

 なるほど、まずは、アレルギーのもとを減らすのが大原則ということか。アレルギーを発症している人も、いまだ発症していない予備軍の人も、寝具を天日干しする、掃除機をかける、ソファーは革張りを選ぶ、寝具やカーテン、カーペットなどを安全かつダニが増えにくいものに変更するなど、できることから少しずつ始めよう。

 個人によってどのぐらいのアレルゲンの量で症状が出るかはケースバイケースなので、掃除の頻度は一概には言えないが、目安として週に1度は掃除機をかけ、フローリングを水拭きしてみよう。シーツや枕カバーの洗濯も週1が理想だ。寝室のカーテンも年に2回は洗濯したい。

 そして、ハウスダスト除去の最終兵器は、なんと言っても空気清浄機だ。現代の生活において空気清浄機は、もはや生活必需品になりつつある。

布団は1週間に1回、干した後1㎡あたり裏表20秒ずつを目安に掃除機をかける。窓を大きく開けて行おう。
布団は1週間に1回、干した後1㎡あたり裏表20秒ずつを目安に掃除機をかける。窓を大きく開けて行おう。

 新型コロナウイルス感染症、インフルエンザの流行を乗り切っても、春になればスギ花粉の気配が漂い、黄砂が飛び始める。生きている限り吸い続ける「空気」をきれいに保ち続けるために、できることはなんだろう? 目に見えない「空気」の大切さを改めて意識し、行動を変え、環境を整えていくことが、自分も、家族も「アレルギー」から守ることにつながるはずだ。

提供:一般社団法人日本空気と水の衛生推進機構