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週刊文春WOMAN春号「終活・エンディング特集」資料請求&プレゼント

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50代からでも始められる! 人生後半を悔いなく生きるための設計図

高齢になった親に向きあったとき、健康に不安を感じたとき――年齢を重ねるほどに「終活」を意識する機会は増えていきます。お墓や葬儀を連想しがちですが、終活でやるべきことは死後の準備に限りません。もしものときにどんな医療や介護を受けたいか、有事に連絡を取りたい人は誰か、そのためのお金をどう工面するか――など、人生後半を悔いなく生きるための準備はすべて終活に該当します。今回の特集では、終活を進めるうえで助けとなるサービスや団体を紹介します。

“落とし穴”に陥る前に知っておきたい終活のイロハ

「いつか終活を始めなければ」と思いつつ、先延ばしにしている人は多いのではないでしょうか。人生後半期の暮らし方という観点から終活の助言・支援に携わるNPO法人ら・し・さ副理事長の山田静江さんに、終活にまつわる疑問にお答えいただきました。

──終活が大切なのはわかっていますが、年齢的にまだ早いように思います。何歳頃から始めれば良いでしょうか。(48歳 派遣社員)

【この人に聞きました!】
終活アドバイザー
山田 静江さん
やまだ・しずえ CFP®認定者、NPO法人ら・し・さ副理事長。 2004年に同NPOで「ラスト・プランニングノート(ら・し・さノート®に改訂)」を作成し、ノートを活用した終活の普及活動を行っている。
【この人に聞きました!】
終活アドバイザー
山田 静江さん
やまだ・しずえ CFP®認定者、NPO法人ら・し・さ副理事長。 2004年に同NPOで「ラスト・プランニングノート(ら・し・さノート®に改訂)」を作成し、ノートを活用した終活の普及活動を行っている。

山田 もしも急に倒れたと考えたら、後悔はありませんか? 終活とは、人生後半期を悔いなく生きるためのライフプランニングです。いつから始めても早すぎることはありません。退職や身近な人の死などをきっかけに、50代、60代で終活に取りかかる人もいます。遅くとも認知症などのリスクが高まる75歳までに、契約や遺言などを含めた準備は終わらせておくほうがいいでしょう。家族の在り方が変化し、さらに高齢化が進んだ現在では、医療や介護の受け方、財産管理、葬儀や墓の手配などを家族に任せることは難しくなっています。自分自身が思いどおりに生き、そして自分を支えてくれる人たちを困らせないための準備、それが終活です。

──身の回りの整理を始めてみたのですが、なかなかその先に進めません。(73歳 主婦)

山田 荷物を片付けるポイントは、捨てるものを選ぶのではなく、捨ててはいけないものを絞っておくことです。また「私が死んだら人にあげたい」と考えているものがあるなら、元気なうちに渡しておきましょう。意外かもしれませんが、遺品を受け取るのに抵抗感がある人は結構いらっしゃいます。

──終活をやろうと思っているのですが、やることが多すぎて……。何から手を付ければいいでしょうか。(63歳 パート)

山田 まずはエンディングノートから始めてみてはいかがでしょうか。ノートの項目は、そのまま終活の手引きになります。エンディングノートには過去・現在・これからの情報を整理・記録する機能があります。特に人間関係の記録は、終活のベースとなります。普段どんな人と交流があり、死後整理を任せられる人は誰なのかなどを書き留めておくといいでしょう。病院への入院や施設に入所するときの身元保証、認知症になったときの財産管理、死後整理などの手続きをそれぞれ誰に託せばいいのか、考えを整理しておきましょう。

──高齢の母親に終活をしてほしいのですが、なかなかやる気になってくれません。どんな声かけをすればいいでしょうか。(59歳 自営業)

山田 親にやってほしいという前に、ご自身の終活はできていますか? 終活は人生の集大成であり、想像以上に大変で手間がかかります。「やってみれば」という声かけだけでは、なかなか行動できません。親御さんの終活を後押ししようと思うなら、まずはお子さん自身が終活を始めてみるのが一番です。例えば、エンディングノートを書きながら家族の思い出話をしてみたり、お墓や家についてわからない部分を相談したりすると、親御さんが関心を持ちやすくなると思いますよ。

──子どもはおらず、夫婦二人暮らしです。実家のお墓は遠いので、自分たちのお墓をどうしようか悩んでいます。(60歳 会社員)

山田 石材会社の方から「夫婦墓を購入したご夫婦のうち、旦那さんは先にお墓に入ったけれど、奥さん側からいつまで待っても連絡がないので心配している」と聞いたことがあります。お墓だけ準備していても、その情報が死後事務を担う人に伝わらなければ、希望を叶えることはできません。エンディングノートにどのようなお墓を、どんな契約で準備しているのか、残った物はどのように処分して欲しいのかということなどをまとめておくと、手続きをする人の助けになります。お墓に限らず、死後の手続きに希望がある場合は死後事務を担う人に伝達手段を用意しておくことを忘れずに。

──おひとりさまの終活でやっておくべきことはありますか。(55歳公務員)

山田 おひとりさまの終活では、身の回りに頼り・頼られる人がいるかどうかが非常に重要です。エンディングノートにどれだけ希望を書いても、それを実行してくれる人がいなければ意味がありません。元気なうちから周囲の人たちとコミュニケーションを重ねて、人間関係を構築しているかが終活のカギを握ります。周囲に死後事務をお願いできる人がいない、迷惑をかけたくないと考えるなら、専門家と死後事務委任契約を結ぶ選択肢もあります。

 またおひとりさまであれば、遺言も用意しておくといいでしょう。多くの方はいくらかの財産を遺して亡くなりますが、遺言があれば財産の使い道に自分の意思を反映できます。最近は人生最後に社会貢献をしたいと、遺贈寄付を選ぶ方も多くいらっしゃいますね。死後の寄付ですから、生活費や老後資金を心配せずに思いどおりの寄付が可能。私が相談を受けている女性の場合は、子どもの支援をはじめ苦しんでいる人の支援に携わる団体に寄付をする方が多い印象です。

 ちなみにおひとりさまで遺言がない場合、生前にはほとんど交流がのない親戚に財産が渡ることもありえます。相続人がおらず遺言もない場合、原則として財産は国庫に帰属することになります。

──高齢になり認知症が心配になってきました。財産管理はどのような対策が必要でしょうか。(72歳 主婦)

山田 認知症を発症した後では自宅の売却をはじめとした財産処分が難しくなります。私が相談を受けたケースでは「夫の資産は約1億円あるけれど、夫が認知症になってしまったので、使えるお金はわずかしかなく、家の傾きも直せない」と困っているご家族がいました。認知症を発症してから財産を処分するには法定後見制度を使うしかありませんが、ご家族にとって使い勝手が良いとはいえません。認知症になる前であれば、任意後見制度や、金融機関のさまざまなサービスで備えることができます。また相続に関しても遺言があれば手続きがスムーズになります。相続開始時点で相続人が認知症を発症しているケースでは、遺言がなければ遺産分割協議が困難になります。75歳を超えると認知症を発症して困る方が増えていきますので、ぜひそれまでに対策してほしいですね。