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文藝春秋7月号「遺言特集」資料請求&プレゼント

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関心高まる「遺贈寄付」
遺言書の作成は専門家に相談

相続を「争族」にしないためだけでなく、自分が築いた財産を広く世の中のために役立ててほしいといった希望を具現化する場合にも、遺言書の作成が有効だ。相続発生時に自分の財産を寄付する手段や、遺言書作成の注意点などを専門家の話を交えて紹介する。

自分の想いを遺言書に託す

脇坂税務会計事務所 所長
認定NPO法人
NPO会計税務専門家
ネットワーク 理事長
脇坂 誠也氏
脇坂税務会計事務所 所長
認定NPO法人
NPO会計税務専門家
ネットワーク 理事長
脇坂 誠也

 自分の死後、遺言書をもとに公益法人やNPO、公共団体などへ財産の一部または全部を寄付する方法に遺贈寄付がある。「遺贈寄付への関心は近年、高まっていますが、潜在的なニーズはもっと高いと思います」。そう話すのは、遺贈寄付に詳しい税理士の脇坂誠也氏だ。

 少子高齢化の進展やライフスタイルの多様化を背景に、生涯結婚せず子どもを持たない単身世帯や、子どものいない夫婦、配偶者に先立たれた単身の高齢者などが増加する中で、相続人が兄弟姉妹や甥・姪という人も少なくない。兄弟姉妹は高齢だったり、疎遠だったりすることもあろう。甥や姪に至っては、付き合いが完全に途絶えているかもしれない。そうした理由で親族への財産承継を望まず、広く世の中のために寄付したいと考える人は、実はもっと多く、今後も増える可能性は高いといえそうだ。

 遺贈寄付の代表的な方法に、遺言による寄付がある。財産の全部または一部を寄付することを遺言書に書き残しておくのだ。ただし遺言書の作成は心理的なハードルが高く、まだまだ作成する人は限られている。その点が遺贈寄付のさらなる普及を阻む要因になっている可能性がある。

 相続人がいない場合、財産は国庫に帰属することになる。相続人不存在のため国庫に納められた財産額は、2022年度には約768億円に上ったという報道もある。築いた財産を国庫に納めるのではなく、自分の想いを託して遺贈寄付するためにも遺言書を作成したい。

法的な執行力のある公正証書遺言が安心

 遺言書には、自分で作成する「自筆証書遺言」と、公証役場の公証人が作成する「公正証書遺言」の2つがある。自筆証書遺言は費用がかからず、思い立った時に作成できる手軽さがメリット。しかし、自分が亡くなった後に発見されない可能性があったり、形式に不備があると無効になったりする恐れがあるので注意が必要だ。紛失や改ざんのリスクもある。その点、公正証書遺言は、2人以上の証人が必要で作成には費用が発生するものの、専門家である公証人が作るため法的な執行力を備えている。原本は公証役場に保管されるため紛失や改ざんの心配もない。作成する場合は、公正証書遺言が安心だろう。

※自筆証書遺言書保管制度を利用する場合は保管申請手数料として3,900円が必要
※自筆証書遺言書保管制度を利用する場合は保管申請手数料として3,900円が必要

 「相続による寄付の場合、寄付先として認められている団体でなければ相続税が非課税にならないなど、いくつかの満たすべき要件があります。一方、遺言による寄付は、法人であればどの寄付先であっても基本的に非課税で寄付できます。自分が支援したい団体にどこでも非課税で寄付できる自由度の高さは、相続による寄付との大きな違いといえます」(脇坂氏)

生前から寄付して活動内容を把握する

 とはいえ、寄付したい団体を選ぶのはひと苦労だ。脇坂氏は「寄付先を探すのは、自分の人生を振り返るきっかけにもなるでしょう」と話す。自分がどんな社会課題に強く関心を持っているか見つめ直すチャンスというわけだ。さらに「まずは生前のうちに普通の寄付を少額からでいいので始めることをお勧めします。そうすれば団体の活動状況を報告してくれるので、どんなことに寄付金を使っているかなどを把握することができます。複数の団体に寄付して比較検討してもいいでしょう」とアドバイスする。遺言書は何度でも書き直せるので、具体的な寄付先を記載していても変更可能。自分の想いを託すことのできる寄付先を見つけたい。