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「日本人は火の中」発言に山上信吾・前駐豪大使(62)が直言「上川外相よ、中国大使を追放せよ」

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「私の40年の外交官人生で、これだけ過激な発言は聞いたことがありません」

 そう憤るのは、前駐オーストラリア特命全権大使の山上信吾氏(62)である。

 5月20日、都内の在日中国大使館で行われた台湾問題に関する座談会。中国の呉江浩駐日大使が、日本が台湾独立に加担すれば「日本の民衆が火の中に連れ込まれることになる」と“恫喝”したのだ。

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 2023年末に外務省を退官した山上氏は今年2月、駐豪大使時代の経験をもとに中国の攻撃的な外交姿勢を掘り下げた『中国「戦狼外交」と闘う』(文藝春秋)を上梓。5月に出版した近著『日本外交の劣化 再生への道』(同前)でも、日本の腰の引けた対中外交に警鐘を鳴らす、気鋭の論客である。山上氏が語る。

「これまで中国は“台湾統一のためには武力行使も辞さない”と公言してきました。今回の大使の発言は、中国が起こす武力行使という火の中に日本の民衆が連れ込まれる、つまり『いざとなったら日本人をぶっ殺す』と言ったのに等しい。到底看過できるものではありません」

 問題発言の発端は、5月20日に台湾で開催された頼清徳新総統の就任式に、日本の超党派議連が出席したこと。中国大使館は抗議の談話を発表し、呉氏個人も座談会で「台湾独立勢力を公然と後押しした」と非難した上で「火の中」と発言したのだ。

山上氏と近著『日本外交の劣化 再生への道

 この座談会には、鳩山由紀夫元首相や福島瑞穂社民党党首、外務省OBらが出席していたが、呉氏の発言をたしなめた者はいなかったという。山上氏が続ける。

「呉氏の発言は、個人的な会合で私見を漏らしたのとはわけが違います。マスコミを通じて、日本全体に伝わることを意識して話しているのです。“ここまで言われても日本は怒らない”と思われたら、中国の軍事的冒険主義のハードルが下がりかねない。足元を見られるだけでなく、“いざ台湾に兵を出しても日本は動かない”と侮られる恐れもあります。怒るべき時に怒るのは外交の要諦。それが抑止力になるのです」