5月5日、お洒落に着飾った若者や家族連れで賑わう恵比寿ガーデンプレイス。その広場の片隅に一組のカップルが腰を下ろしていた。紙コップに入ったシャンパンで何度も乾杯する2人。ショートカットの女性が、男性の顔を引き寄せると……。

(初出:「週刊文春」2024年5月23日号、「週刊文春電子版」2024年5月15日 年齢、肩書等は当時のまま)

赤ワインをベンチで ⓒ文藝春秋

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名曲の生みの親である梅林茂氏

 この男性は、作曲家・音楽プロデューサーの梅林茂氏(73)だ。あの名曲の生みの親として知られる。

 2018年2月に開かれた平昌五輪。和笛・和太鼓の調べが美しい曲に乗って氷上で舞い、圧巻のパフォーマンスを披露したのは羽生結弦(29)だ。羽生は、この大会でソチに続く2大会連続で金メダルを獲得。その彼がフリープログラムで使用した曲が『SEIMEI』だった。

作曲家・音楽プロデューサーの梅林茂氏。エリック・クラプトンのバックバンドを務めたことも

「2015年シーズンから彼は『SEIMEI』をフリーで採用しています。同曲の原曲は、映画『陰陽師』のオリジナル・サウンドトラックに収録されている。平昌五輪後も好んで使用しており、陰陽師にインスパイアされた羽生選手のスケートパフォーマンスは彼の代名詞の一つです」(スポーツ紙デスク)

羽生結弦

 この『SEIMEI』を生んだ梅林氏は、ウォン・カーウァイ監督の映画「花様年華」のテーマ曲「夢二のテーマ」の作曲家として知られ、トム・フォード監督の「シングルマン」などの劇中音楽を手がけたことでも知られる世界的マエストロ(巨匠)だ。

 イタリアの映画サイト『Cinecittà News』は、彼についてこう書いている。

愛人とレッドカーペット

〈梅林茂は日本で最も重要なサウンドトラック作曲家である。彼は、ロベルタ・トーレからトム・フォード、ピーター・ウェバーまで、西洋の映画製作者と頻繁に仕事をしてきた数少ないミュージシャンの一人だ〉(2023年10月18日付)

 金メダリストが惚れ込み、ヨーロッパの映画界からも高く評価される梅林氏の楽曲。しかし、幾多の名曲を生み出したマエストロは、いま“老いらくの不倫愛”に身を墜としている。

手つなぎデート ⓒ文藝春秋