東京と大阪で脳・脊髄・神経疾患の先駆的治療を牽引する田辺英紀理事長。三叉神経痛と顔面けいれんの根治手術「微小血管減圧術」に長年携わり、その技術の普及にも尽力している。正しい治療法を知らず悩んできた患者に大きな福音だ。
理事長 田辺 英紀
たなべ・ひでき/1984年大阪医科大学卒業。90年同大学大学院修了。医学博士。北野病院脳神経外科副部長、城山病院病院長、田辺脳神経外科病院病院長を経て現職。日本脳神経外科学会認定 専門医、大阪医科大学非常勤講師/教育診療教授、埼玉医科大学非常勤講師を歴任。
三叉神経痛と顔面けいれんは脳の手術で根治できる
東京・町田市の「町田脳神経外科」は脳と脊髄、神経系の疾患を網羅的に治療する専門施設だ。陣頭指揮を執る田辺英紀理事長は、日本脳神経外科学会認定脳神経外科専門医で、顔面けいれん /三叉神経手術の学会である、第26回日本脳神経減圧術学会会長も歴任、脊髄/脊椎手術も合わせるとおよそ7000例の手術を執刀してきた脳神経外科手術のエキスパートである。
加えて同じく熟練の手術手技をもつ院長・副院長の脳神経外科学会認定専門医が脇を固める。入院施設は19床とコンパクトながら、設備は大学病院に比肩するレベル。最新の脳血管内治療装置(DSA)のほか、MRI装置は短時間で高解像度画質が得られる3・0テスラおよび最新の1・5テスラの2台が常時稼働。CTは64列マルチスライスタイプ。手術室にはあらゆる脳・脊髄外科手術が可能なマイクロサージャリーに欠かせない先進の手術用顕微鏡をはじめ、すべての機器が備えられている。
「現在、当院では『三叉神経痛・顔面けいれん専門外来』に力を入れています。いずれの疾患も根治療法は、原因である脳の病変部にアプローチする手術。しかし共に罹患率が10万人に4~5名と少ないためか正しい情報が伝わっていません。どの診療科を受診すればよいかわからないまま、鎮痛剤や神経ブロックなどの対症療法に頼り、治らず、長期間辛い思いをしている方が少なくありません」
三叉神経は、顔面の感覚を脳に伝える感覚神経。脳深部にある根元から、名前の通り3本に分かれ、顔の上部・中部・下部を司る。症状は、顔の片側に走る激烈な痛みの発作で、瞼、鼻腔、唇など部位は人によりさまざま。歯茎の痛みで歯科を受診し、健常な歯を抜くといった誤診例も聞く。食事や洗顔、会話など日常動作が激痛発作を誘発するため、生活の質が著しく低下する厄介な病気だ。
「三叉神経痛の原因は、脳腫瘍や脳動静脈奇形など別の疾患が隠れているケースもあるが、多くは頭蓋内の微小血管が三叉神経に触れ、圧迫していることによるものです」
症状や経緯を丁寧に問診し、特殊な撮像法も加えた脳のMRI検査を実施。診断を確定させる。
薬物療法として過剰な神経伝達を抑制する抗てんかん薬がある。しかし、長期服用で薬効が落ちたり、眩暈やふらつき、皮膚湿疹などの副作用が起こったりすることがあり、症状を制御できない場合は手術を検討する。
「神経ブロックは、薬品で三叉神経の顔面に近い部位を破壊し、麻痺させるので、根治しないばかりか、顔のしびれといった合併症が生じます」
根治手術は「微小血管減圧術」と呼ばれ、精密な手術用顕微鏡下で行われる。痛みのある側の耳の後ろを4cmほど切開し500円玉ほどの骨窓を開け、脳深部の三叉神経まで慎重にアプローチ。圧迫の原因となっている血管を特定し、丁寧に剥がして移動させる。エキスパートの所要時間はおよそ2時間半。1週間の入院が必要で、寛解率は95%以上という。
「私は第26回日本脳神経減圧術学会会長として、微小血管減圧術の啓発と教育に努めています。一人でも多くの方に、最新の情報と最善の治療を届けることが使命です」
一方顔面けいれんは、顔の表情筋を動かす顔面神経が、脳の指令とは無関係に収縮し、顔の半分が引きつったり、目元や口元がけいれんしたりする疾患だ。痛みは伴わないが徐々に進行。重症例では目を開けられない、口元が強く歪むなど、特に女性においては深刻である。
原因は三叉神経痛と同じく、脳深部の顔面神経が周辺の微小血管に圧迫・刺激されるためだ。
「顔面けいれんには有効な薬物療法がありません。対症療法はボトックス療法。筋肉を麻痺させるボツリヌス菌の毒素を活用した薬剤を、表情筋に注射することで、けいれんを見かけ上抑えることができます」
ただし効果は2~3カ月と限定的で、施術を繰り返すと、毒素に抗体ができて効かなくなるばかりか、顔の麻痺を生じることもある。
「根治療法はやはり『微小血管減圧術』一択です。耳の後ろの、三叉神経痛の場合よりやや下に500円玉大の骨窓を開け、直接的に血管による圧迫を取り除きます」
ほとんどのケースで、手術直後からけいれんが治まるという。
東京・大阪の2大拠点で脳と脊髄疾患の手術に向き合う
田辺理事長が統括する医療機関は、町田脳神経外科と共に、大阪の「梅田脳・脊髄・神経クリニック」がある。院長以下、経験豊富な医師3名が参画。手術と入院は、必要に応じ連携病院に入院してもらい、田辺理事長が執刀している。機器は3・0テスラMRI、神経伝導検査装置、デジタル脳波計、筋電図など高度機器を整備している。
東西いずれの医療機関でも田辺理事長薫陶の下、脳神経外科医の卓越した技量は、脳腫瘍、脳動脈瘤、脳動静脈奇形などの脳疾患はもとより、脊柱管狭窄症や脊髄腫瘍など脊椎脊髄疾患でもいかんなく発揮される。
「来院する患者さまは足腰の痛みを訴える例が多いのですが、初診でじっくり話を聞くと首が動かない、手足がしびれる、歩行が覚束ない、手元の細かい作業ができない等いくつかの症状が併存していることがあり、経過や治療歴も様々です。慎重な問診と画像検査で、脳・頸椎・胸椎・腰椎、どの部位の神経が障害されているかを正確に見極めることが肝心」
治療は手術ありきではなく、年齢や生活背景に応じた計画を立てる。薬物、装具、適切な運動などの保存療法で改善する例は少なくない。
「手術は低侵襲性を追究しています。脳神経外科医は神経と神経を取り巻く血管、筋肉、骨格を細部まで熟知。顕微鏡下の立体術野で実施するマイクロサージャリーは、神経と周辺組織の温存を図りつつ、痛みや機能障害の原因である椎間板、靭帯、骨の変性・変形の的確な除去が可能です。術後の早期回復も期待できます」
頸部脊柱管狭窄症に実施する頸椎前方除圧固定術や、後方から行う頸椎椎弓形成術はその代表。腰部脊柱管狭窄症や腰部椎間板ヘルニアも、顕微鏡下で的確な除圧術が行われる。
“神経の痛み”で悩んでいる方は、いずれかの医療機関を受診してはどうだろう。信頼できる主治医と出会えること請け合いだ。
INFORMATION
町田脳神経外科
〒194-0034 東京都町田市根岸町1009-4
TEL. 042-798-7337
https://www.machida-ns.clinic/
■診療科目 脳神経外科・脊髄外科・脳神経内科
■受付時間 (月~土) ※土曜は午前中のみ
午前8:30~12:00
午後14:00~17:00
※診療時間は午前9:00から、午後14:30からとなります。
■休診日 土曜午後・日・祝
梅田 脳・脊髄・神経クリニック
〒530-0051 大阪府大阪市北区太融寺町3-24
日本生命梅田第二ビル 1階
TEL. 06-6312-0011
https://umeda-neuro.clinic/
■診療科目 脳神経外科・脊髄外科・脳神経内科
■受付時間 (月~金)
午前9:00~12:00
午後15:00~18:00
■休診日 土・日・祝
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