コロナ禍で料理の楽しさを知った、という人は少なくないはずだ。私もそのひとりで、気まぐれ週末シェフを始めて5年になる。上達具合はいまいちだが、自分が理想とする料理像はだんだん掴めてきた。
ずばり、“映える料理”である。
食べてもらった人に、「美味しい」とよろこんでもらうのはもちろんうれしい。ただ、自分の料理を見た人に、「美味しそう」とホメられるのもめちゃくちゃうれしいのだ。私は料理研究家のSNSやグルメ雑誌を教材にして、せっせと勉強を続けてきた。
先日、そんな噂を耳にした文春オンライン編集部から、またとない依頼が舞い込んだ。その内容は著名なフードスタイリストから、盛り付けのテクニックや食器の知識を学ぶというもの。しかも、北欧の高級食器を使って!
――そう、天は私に映えを極めよ、というのだ。
撮影当日、私は勇躍、都内某所のキッチンスタジオへ向かった。
使うのはデンマークの名門、ロイヤル コペンハーゲンのお皿
スタジオに着いた私の目に飛び込んできたのは、ブルーの絵柄が描かれた白磁のお皿の数々。そう、今日使うのは、ロイヤル コペンハーゲンの新コレクション「MOTIF(モチーフ)」なのである。
ロイヤル コペンハーゲンといえば、デンマークが生んだ高級食器の王者。それだけに、料理の盛り付けにはセンスも問われそうだが……プロの手にかかったら、いかなるパフォーマンスを発揮するのだろう?
盛り付けを教えてくれるのは、フードスタイリストの河合真由子さん。大手食品メーカーのカタログや広告も手がける、料理を美味しそうに見せるプロ中のプロである。
◇教えてくれたのは……

フードスタイリスト/フードコンサルタント
株式会社レシピオブライフ代表取締役。大学卒業後、大手流通業、メーカーでの中国語通訳などを経て渡中し、飲食店の立ち上げを経験。現在は食マーケティングコンサルタントとして、飲食施設、ホテルなどのコンサルティングを行うほか、食品メーカーのカタログや広告のフードスタイリングなどを手がける。監修本に「盛りつけの基本とアイデア」(成美堂出版)
盛り付けの基本は“余白”と“動き”
最初の料理はタルティーヌ。クリームチーズを塗ったパンにスモークサーモンを載せたフランス風のオープンサンドイッチだ。
河合さんが選んだお皿は円形の「モチーフ プレート」。直径22cmの小ぶりなお皿は、朝食などちょっとした料理を載せるのに役立つという。
「まず、お皿に料理を盛り付けるときは、できるだけ見込み(お皿の内側の中央部分)だけを使うようにしましょう。お皿全体に料理を盛り付けてしまうと、余白がなくなって、野暮ったく見えてしまいます。何より、せっかくのうつわの魅力も半減してしまいますから。カットしたパンはお皿の見込みにやや斜めの角度にセットして、動きを意識しましょう」

「クリームチーズにはケッパーを混ぜ込んでアクセントに。スプーンを使って、たっぷりの量をラフに塗りつけてください」


「次は主役のスモークサーモン。魚やお肉はペタっと置くのではなく、空気を含ませるように畳んで、立体感を意識します。こうすることで高さが出て、よりフレッシュに見えるんです」

仕上げにスモークサーモンとよく合うディルというハーブを添えるが、ここにもコツが。
「ハーブはこまかくちぎって、料理全体の上にジグザグのラインを意識して載せていきます。仕上げのオリーブオイルは、細い線になるように意識して、お皿の余白部分にも垂らすようにすると動きが出ます」


美味しそうに見せる盛り付けのコツは立体感と動きにある。やってみると、たしかに食材の鮮度が際立ち、高級レストランやグルメ雑誌っぽく見える!
“形のない料理”にはトレンドのオーバルディッシュを
次はイタリア発祥の前菜、カプレーゼを盛り付ける。トマトとモッツァレラチーズ、バジルが織りなすイタリアンカラーが見どころの料理だ。
「ここは『モチーフ オーバルディッシュ』の出番です。楕円形のお皿は、カプレーゼのような形のない料理でものせるだけでまとまりが出ます。使い勝手が良いので、非常に人気が高いトレンドの形です。テーブルに置いた際にも圧迫感がなく、食卓がすっきり見えるのもメリットですね」
まずはモッツァレラチーズをオン。ペタっと並べて置くのではなく、立体感を意識して重ねるようにセットする。


そこに色のバランスを意識しながら、トマトとイチゴを盛り付けていく。
「ミニトマトは赤と黄色を使いました。イチゴを使うのは私流のアレンジです。色どりもいっそう豊かになりますし、カプレーゼのドレッシングにも意外と合うんです。断面の模様もキレイなので、盛り付けた時に見えるようにしましょう」


「今回はバジルの代わりに、ミントとパクチーを使うことで春らしさを演出しました。盛る際はできるだけふんわりとさせて、立体感が出るように」

盛り付けていくと、モッツァレラチーズとお皿の白が重なる部分がちょっと気になった。河合さんに相談すると、「こういう場合はチーズにブラックペッパーをかけてメリハリをつけましょう」とのアドバイスが。

出来あがった一皿を眺めてみる。色とりどりのカプレーゼをオーバルのフォルムがすっきりまとめ、お皿のラインがモダンなアクセントをきかせる。まさに黄金バランスだ。
応用編! “三角形”のお皿はどう使う?
メインディッシュはエビとパクチーをたっぷり使ったベトナム風の生春巻き。河合さんが選んだうつわは、三角形のフォルムがインパクトを放つ「モチーフ ディッシュ トライアングル」だ。
「どの家庭でも丸いお皿が圧倒的に多いはず。とはいえ、丸ばかりだと、どうしても食卓が単調になってしまうんです。そんなときに、こうしたトライアングルのお皿を投入すると、アクセントになります。少し珍しいですが、ロイヤル コペンハーゲンでは以前から展開されているかたちですね」

ただ、その形からして、盛り付けの難度が高そうに思えるが……。
「大丈夫。三角形の中心部分の丸を意識して、丸いお皿の感覚で盛り付ければいいんです。こうしたほうが、余白が多くなって、かえって三角形のフォルムが際立ちますから」

生春巻きは5~4分の1をカットし、ひと切れの断面を見せるように盛り付ける。
「カットした部分も、エビが並んでいる部分も生春巻きの見せどころ。ですので、このようにカットするのが合理的なんです。盛り付けるときは、他の料理と同じく、重ねて高さを出すことを意識しましょう」

断面からのぞく野菜のグリーンやライスペーパーから透けるエビの赤色が白磁に鮮やかに映える。そして三角形のお皿が生む躍動的なリズムが食卓を盛り上げる。
ロイヤル コペンハーゲンらしからぬ(?)模様のルーツは、実は…
ところで、ロイヤル コペンハーゲンといえば、「ブルーフルーテッド プレイン」と呼ばれるデザインが有名だ。開窯した年に制作されたこのデザインは、透き通るような白磁に海洋国家のデンマークをイメージしたブルーで描かれたボタニカル柄が特徴。今回使用した新コレクション「モチーフ」は、そんなブルーフルーテッド プレインから派生したのだという。
「ブランドの創設250周年を記念して作られた特別なカプセルコレクションの見どころは、ブルーフルーテッドからインスパイアされたデザインです。このコレクションも、他のロイヤル コペンハーゲンの食器と同様に、すべて熟練したペインターの手によって一点一点絵付けされています」と、日本支社でマーケティングマネージャーを務める木田由香里さんが教えてくれた。

複数の細いラインを組み合わせたグラフィカルな文様は、ラインとラインの間に一定のスペースが設けられた緻密なもの。ただ、ペインターの手描きだけあって、ラインの一本一本に独特の味わいが感じられる。ラインのかたちも、たしかにブルーフルーテッドに描かれた植物のつるを連想させる。
ブランドを代表する絵柄をルーツに持ちながらも、幾何学模様のようなシンプルな美しさも兼ね備えた「モチーフ」。なんとなくロイヤル コペンハーゲンとは縁遠い気がしていた私も、これなら気後れすることなく生活に取り入れられそうだ。
その使いやすさには、河合さんも惚れ込んだよう。
「クラシカルなブルーフルーテッドとはひと味違う、モダンでスタイリッシュなイメージがモチーフの持ち味ですね。柄の主張が控えめなので、盛り付けがしやすく、合わせる料理も選びません。普段の食事から、ホームパーティまで幅広いシーンで使えそうです」

今回の取材でわかったこと。モチーフのような食器とちょっとした盛り付けのテクニックがあれば、普段食べているシンプルな料理でも、見栄えのいい特別な料理に格上げすることができるのだ。
かの北大路魯山人は、うつわを料理の魅力を引き出す服にたとえた。たしかにロイヤル コペンハーゲンのモチーフは、料理を彩るとっておきのドレスとなりそうだ。
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