気候変動によって豪雨・台風などの自然災害は増加の一途。四方を海に囲まれた火山列島=日本では地震や津波も懸念される。「備えあれば憂いなし」。落ち着いて生活し災害時に慌てないために、一般家庭でも今すぐにできる防災対策について、備え・防災アドバイザーの高荷智也さんに聞いた。
災害の直撃を受けても即死しないために
9月1日は「防災の日」。1923年9月1日に発生した関東大震災の教訓を忘れず、国民の防災意識を高めるために定められている。自治体や企業だけでなく一人ひとりが台風や地震などの災害について認識を深め、被害を最小限にとどめるための備えを確認・強化することが大切だ。
備え・防災アドバイザーの高荷智也さんは「まずは災害の直撃を受けた時に即死しない準備が重要」と強調する。
「水や食べ物を備蓄し防災リュックを用意する、といったことはもちろん行なっていただきたいです。しかし、水や食料はあったけれど逃げ遅れて火災や津波で命を落とした、家や家具の下敷きになって絶命した、となっては本末転倒。頑丈な家に住み、家具をきちんと固定し、素早く避難するための準備・想定ができていることが先決です。その次にライフラインが止まった時の備えをしておく、という順番で考えましょう」
合同会社ソナエルワークス代表社員。備え・防災アドバイザー/BCP(事業継続計画)策定アドバイザー。「自分と家族が死なないための防災」をテーマに、地震・水害・パンデミックなどの自然災害から銃火器を使わないゾンビ対策まで、堅い防災を分かりやすく伝える活動に従事。防災系YouTuber・Voicyパーソナリティとしても活躍中。著書に『今日から始める家庭の防災計画』『防災リュックはじめてBOOK』(徳間書店刊)など
実際に災害が起きた場合も、やはり真っ先に取るべきなのは生きるための行動だ。
「まず命を守り経路を確保し危険を避けて避難し、水と食料を確保することがとにかく最優先。そして、その次に大切なのがバックアップ電源です。停電すると即全員が亡くなるというわけではありませんが、特に電動の医療器具を自宅で使っている人、ヒーターやポンプが欠かせない人や家族同様の大切なペットのためにも、電源・電気は不可欠です」
重要なポイントは“1500Wが出せるかどうか”
冷蔵庫、エアコン(空調機)、炊飯器、電子レンジ、お湯が沸かせる電気ポット、洗濯機……。助かった命をつなぐために必要な、また人間の尊厳を守るために欠かせない電気機器は多い。しかし、ここに挙げた家電は消費電力も大きい。稼働させる電力をまかなうにはどうすればいいのか。
「ズバリ、 “小型のインバーター発電機とポータブル電源の組み合わせ”が現時点では最適解でしょう。どちらも1500W以上の出力コンセントを持っていれば理想的ですね」。高荷さんは、そう明確な解決策を提示した。
「日本の住宅の壁面のコンセントは、一部のエアコン用などを除けばすべて1500Wが上限。裏を返せば、1500W出力が取れる電源があればほぼすべての電気機器が動かせるということになるので、“1500Wが出せるかどうか”が重要なポイントなんです。それらを何台・何時間使えるかは、発電機用の燃料の備蓄量とポータブル電源の容量の大きさによって変わってきます。
ちなみに、電気を作るといえばソーラーパネルを思い浮かべる方も多いと思いますが、持ち運べる小型のソーラーパネルは出力が高くありません。消費電力の小さい照明や扇風機などは動かせるものの、先に挙がったような家電の利用には適さないことが多いです。そもそもソーラーパネルは夜間や天候が悪い場合はほぼ使用ができませんしね」
とはいえ、ポータブル電源だけならともかく、発電機ともなると大掛かりなイメージを持つ人も多いだろう。高出力の発電機の動力源は、ガソリンやガスを燃焼させるエンジンだ。燃料はガソリンやLPガスなどで、屋台や夜店でよく見かける業務用発電機はガソリンや大型のLPガスボンベを用いるものが多い。
しかし、小型の家庭用発電機には、カセットコンロなどで使うカセットガスボンベ(CB缶)が使用できるものもあるのだという。
「CB缶は安全性や保存性、携帯性に大きなメリットがあります。引火性が強いガソリンは携行缶が必要で運搬や取り扱いに気を使うし、家庭で備蓄するにしても消防法で40リットルまでと決められていて、一部店舗で市販されている“ガソリンの缶詰”以外は長期間保存もできません。
一方、CB缶はスーパーなどで手軽に入手でき、1199本(LPガス300kg以下)まで家庭で長期保存することが可能です。CB缶専用タイプの発電機は、従来は最大出力1300W程度でしたが、EENOUR(イーノウ)のカセットガス インバーター発電機『GS2000i-B 1.5KVA/1500W』(以下 GS2000i-B)は1500W出力を実現しました。この画期的なモデルの登場は一般家庭にとって朗報・吉報! です」
燃料も限られる非常時……最も効率の良い発電方法は?
GS2000i-BにCB缶を6本接続した場合、100%負荷の場合は最大140分、25%負荷なら230分の長時間運転が可能だ。とはいえ、燃料が切れたらそこで発電はストップしてしまう。
「なので、先ほど言ったように発電機とポータブル電源とのセット利用がおすすめなんです。発電機をもっとも燃費よく動かす方法は、一定の出力で稼働させ続けること。インバーター発電機でポータブル電源を満充電して、各家電にはポータブル電源側から電気を供給する。充電容量が20%ぐらいまで減ったら、再び発電機を運転してポータブル電源をフルチャージする、というサイクルなら、非常時にも燃料を節約しながら家電を使えます。
EENOURの『P2001PLUS』のような最新のポータブル電源の多くは、最大1500Wで充電を行える急速充電機能を備えているので、1~2時間で充電が可能。発電機とポータブル電源双方で1500W出力が可能だと、電源側の急速充電というポテンシャルも最大限活かしつつ、効率良く電力を安定供給できるのです。これは何とも心強い」
コンロと発電機で災害時のQOLは大きく変わる
ちなみに、利用・保管にあたっては、基本的には不要不急の場合やレジャーなどでの使用はせず、災害時・緊急時に備えておくべきだと高荷さんは言う。
「発電機本体は新品状態で保管すれば5~10年は持つので、いざという時には缶詰のエンジンオイルを入れる作業を含めて5~10分ほどで使えますが、アウトドアやキャンプなどで使っていると、オイル劣化に伴う交換やメンテナンスが必要になる場合があります。防災をメインに考えている方は、基本的には有事の際のために日常使いはせず保管しておいていただきたいですね。
ただ、普段から卓上カセットコンロを料理に活用するなどして、CB缶の数を確認・補充するのはいいことです。繰り返しますが、自宅で大量に保存できるのがCB缶ならではのメリット。ガスコンロと発電機、ポータブル電源があるかないかで、災害時の生活の質=QOLは本当に大きく変わってきますよ」

また、取扱説明書など随所に明記されてはいるが、発電機は使用環境にも注意が必要だ。
「外観デザインがお洒落になってはいますが、屋内・室内・テント内・自動車内などでの使用は絶対にやめてください。一酸化炭素中毒になる恐れがあります。
発電機をベランダなどに置いて延長コードを使い、窓を閉めて利用することもできますが、屋外に置いた発電機でポータブル電源を充電し、そのポータブル電源で屋内外の機器・家電を動かすのがやはりベストだと思います。また、発電機の屋外での運転にあたっては、特に夜間は騒音に配慮を。災害時であっても騒音に敏感な方はいますし、トラブルのもとにもなりかねません」
かつては20万円以上したインバーター発電機も、昨今はかなり入手しやすい価格となっている。
「ポータブル電源もそうですが、ずいぶんリーズナブルになりました。通販ポータルサイトやメーカーのキャンペーンを利用すると、かなりお得感のある価格で入手できる場合がありますよ。

町内会・自治会や企業で購入する場合は、補助金や優遇制度があるかどうか確認しましょう。個人で利用できる補助金制度はないと思いますが、例えば中小企業向けの制度では『事業継続力強化計画』があります。これは中小企業庁が取り組んでいるBCP策定の普及制度で、防災用設備などを導入する時に一括償却ができたり、助成金や融資を低利率で受けられたりと、税制面や補助金面での優遇があります。全国で利用できるため、ぜひ活用してください」
最後に高荷さんはこう締めくくった。
「発電機と電源の進化により、かつては家庭ではほぼ不可能だった1500W級の電気の備蓄・出力が簡便にできるようになりました。インバーター発電機とポータブル電源を併用することで、夏場に室内でエアコンを長時間使えたり※、冷蔵庫を24時間動かし続けたり、というパワープレイができるようになったのは画期的なことです。いざという時の準備をするかしないかを決められるのは今だけ。災害が起きてからでは遅いんです。『防災の本番は発災時ではなくて平時』であることを肝に銘じてください」
※エアコンを使用する際は、機器の定格電圧にご注意ください。
INFORMATION
◆スペック
GS2000i-B 1.5KVA/1500W
価格:13万7900円
サイズ(長×幅×高):47.3×26.3×41.3cm
乾燥重量:約16kg
定格出力:1500W
AC出力:100V、50Hz/60Hz、15A
DC出力:12V、4A
USB出力:5V、1A+2.1A
P2001PLUS
価格:19万9800円
容量:2048Wh
サイズ(長×幅×高):39.9×28.6×32cm
重量:約22kg
AC出力:100V、50Hz/60Hz、単ポート:20A・合計:24A
AC出力:4ポート合計2400W(瞬間最大4800W)
◆問い合わせ:株式会社イーノウ・ジャパン
https://www.eenour.jp/
