40代から気をつけたい口の衰え「オーラルフレイル」

 よく噛んで食べることが大切と知りながら、なかなか実践できない人も多いのではないだろうか。そんな人はオーラルフレイルに陥るリスクが高くなるというから要注意だ。

金澤 学先生
東京科学大学 大学院医歯学総合研究科 高齢者歯科学分野教授。同大学病院義歯科、先端歯科診療センター センター長

「オーラルフレイルとは、加齢によって筋肉などが衰え、口の中の機能が低下した状態を指します。これによって要介護認定になるリスクが2.4倍、総死亡リスクが2.1倍になるという調査結果もあります」と警鐘を鳴らすのは金澤学先生。

 オーラルフレイルになると軟らかいものを好んで食べるようになり、タンパク質などの栄養素を摂取しにくくなるため、全身のフレイルにもつながる。また、話す際の滑舌も悪くなり、口まわりの筋肉が緩んで見た目にも衰えが目立つように。主に50歳以上が対象の言葉だが、40代から口腔機能が落ち始めている人も少なくないのだとか。

「加齢のほかにむし歯や歯周病が原因になることもありますが、とくに気をつけたいのは口まわりの運動不足です。食事をよく噛まずに食べたり、軟らかいものやゼリー食が多くなったりすると、口まわりの筋肉が弱くなってしまいます」(金澤先生)

栄養低下や社会性の低下につながる「お口の衰え」のリスク
高齢者だけでなく、40~64歳の28.3%でオーラルフレイル判定基準に該当しており、お口の衰えのリスクがうかがえる。

※若年期194名、壮年期198名、前期高齢期199名、後期高齢期195名による調査
※東京科学大学・ロッテによる調査


オーラルフレイルのチェックリスト
● あなたの歯は19本以下?(インプラントは自身の歯として数えない)
● 半年前と比べて固いものが食べにくくなった
● お茶や汁物等でむせることがある
● 口の渇きが気になる
● 普段の会話で言葉をはっきり発音できないことがある
→ 2つ以上、思い当たったらオーラルフレイルのリスクが……。

出典:一般社団法人 日本老年医学会/一般社団法人 日本老年歯科医学会/一般社団法人 日本サルコペニア・フレイル学会「老年歯科医学」2024;38(supplement号):P86-96

 しっかり噛むと口の周りの筋肉がつくうえ、唾液がよく分泌されるというメリットも。唾液には口の中を清潔に保つほか、消化を助け、免疫力を保つなどの大切な役割もある。

「ひと口あたり30回噛むことが推奨されていますが、なかなか難しいかもしれません。私自身、忙しい時はつい急いで食べてしまいがちです。そこで『食事の時にちゃんと噛めたかな』と振り返る習慣をつけてみてください。もし足りないと感じたら、ガムを使って噛む回数を追加するのもいい方法です」(金澤先生)

 ガムを食べている時は5分間で430回噛むと言われているため(日本チューインガム協会HPより)、食事の際に不足してしまった噛む回数を補うことも可能だ。

「口の中の機能は失って初めて気づくもの。60代、70代になってしまうと、V字回復することは困難です。日頃の訓練により予防することが健康長寿にもつながります」と金澤先生。

 将来のためにも、きちんと噛むことを意識し続けるいい習慣を身につけたい。

噛むことは、脳や心、身体にまで多大な影響を及ぼしていることがわかってきた。知れば知るほど、あなたの味方になってくれる“噛む力”。最新情報はこちらから。

提供/株式会社ロッテ


photo : Miki Fukano
text : Ayaka Sagasaki