主人公が“ありえない方法”で猟奇的な殺人を重ねていく衝撃作『名無し』(ヒーローズ刊)。原作は映画「爆弾」での怪演が話題の俳優・佐藤二朗が手掛け、作画はサスペンスの表現に定評のある永田諒が担当している。

 来年5月には映画化(映画『名無し』公式サイト)も予定される本作は、どのように生まれたのか。担当編集者の宮崎友旺(ともあき)さんに話を聞いた。

©︎佐藤二朗・永田諒/ヒーローズ

映画脚本から漫画に

 佐藤はそもそも、本作の原案となる脚本を映画化を念頭に置いて執筆していた。周囲の意見を取り入れて改稿を重ねながら、映画関係者に売り込んでいたという。ところが……。

「昨今の映画界では、オリジナル脚本をいきなり映画にするのは難易度が高く、すぐの映画化は難しいと判断されたそうです。そこで、まず漫画化してみてはどうかという話になりました」

 そんな異例の経緯を経て、『名無し』の物語は漫画として世に出ることが決定した。しかし、漫画化にはある課題があったという。

「(漫画担当の)永田さんに脚本をお見せすると、開口一番に『面白い』と興味を持ってくれました。ただ、主人公の“右手の能力”について『漫画でどう表現すればいいんですかね?』と言われて。僕自身、今まで見たことのないキャラクターだったので『どうしましょうかね?』という感じでした」

©︎佐藤二朗・永田諒/ヒーローズ

『名無し』の主人公・山田太郎は連続殺人犯。その犯行の鍵になるのが“右手の能力”なのだが、視覚的に表現するのが難しかったという。

 だが結果的に、永田の画力と構成力がこの問題を乗り越えた。鏡を利用した演出や、被害者側のリアクションを活かすことで、巧みに表現することに成功したのだ。佐藤も「すごく分かりやすく描いていただいた」と感想を述べていたという。

©︎佐藤二朗・永田諒/ヒーローズ

“右手の能力”とは何なのか?

 そして漫画の好評を受け、今回の映画化が実現した。宮崎さんによれば、俳優・佐藤二朗の熱心なファンはもちろん、そうではない読者層にも読まれた実感があるという。

「テレビ画面越しの二朗さんは“いつもニコニコして明るい人”というイメージが強いのか、この漫画を読んでギャップを感じたという声もありました。もちろん二朗さんのファンには読んでもらいたいです。ですが、何も知らない人が手に取っても『面白い』と感じてもらえる作品になったと感じています」

 “右手の能力”とは何なのか。以下に紹介する第1話を読んで確かめてほしい。

名無し (1) (ヒーローズコミックス わいるど)

佐藤二朗 ,永田 諒

ヒーローズ

2025年4月30日 発売