キリスト教の愛に基づき、米国人医師により設立された東京衛生アドベンチスト病院は、1996年に東京23区内でも、早期に緩和ケア病棟を開設した。より良い医療を行うために国際的医療施設評価機関であるJCIの認証も取得し、安全を確保した質の高い緩和ケアを提供し続けている。

理事長 病院長
西野 俊宏 Nishino Toshihiro

1988年米国ロマリンダ大学医学部卒業。米国の病院で研修後、1995年から東京衛生アドベンチスト病院で勤務。緩和ケア内科部長を兼任。

がんの様々な“痛み”に対して全人的な癒しを提供する

 当院は、「がんと共に生きる方と家族の心と体の痛みを和らげ、その生き方を尊重しキリストの心で仕えます」を理念に緩和ケアを行っています。とくに体の痛みに対しては医療の適切な介入が必要です。対処法は、お薬など様々なものがあり、体の痛みを和らげることで心の苦しみも和らいでいきます。心と体はつながっているのです。

「生き方を尊重する」とは、ひとことで言えば患者さんに寄り添うことです。がんが進行して治癒が難しくなっても、患者さんやご家族から決して逃げず、真実を告げつつ私たちにできるケアを精一杯行います。

緩和ケア病棟と同じ階にあるテラス。木々に囲まれ隣接する天沼教会も見える

 緩和ケアのもう1つのキーワードは「希望」です。家族に感謝を伝えたい、優しく接したいと思っても、体の痛みが強いとなかなかできないものです。痛みを取ることは、患者さんの希望をかなえるためにも大切です。

 また、当院には専属の牧師(チャプレン)が在籍し、心や魂という側面から患者さんやご家族を支えています。

【チャプレン】宗教の種類に関係なく、専属牧師(チャプレン)が病室を訪問。医師や看護師と相談しながら患者さんの要望に応じてお話に耳を傾ける。悩みを語る人、人生を回想する人など様々。

 がんの患者さんの苦しみは、体の痛み、心の痛み、経済面などの社会的な痛み、そして人生の意味や自分の存在意義を考えてしまうスピリチュアルな痛み――この4つがあるとされます。そのすべてをケアして全人的な癒しを目指すのが緩和ケアです。人生を終える間際まで自分らしい生き方ができるように、スタッフが一丸となって支えます。

【緩和ケアチーム】患者さん一人ひとりの価値観を尊重した全人的医療をチームで実践する緩和ケア内科。「ご家族もチームの一員」という考え方でより良い緩和ケアを目指す。

全室個室、24時間面会可、ペットも面会できる療養環境

 患者さんが自分らしく過ごせるように、緩和ケア病棟は全室個室で24時間面会可能、ペットも面会できます。食べ物の持ち込みも可能なので食べたいものを食べていただけます。このような心の癒しにつながる療養環境に加え、スピード感をもって入院の希望に応じることを重視しています。外来での相談から入院まで迅速に対応し、また希望されれば入院から在宅療養に切り替えることができます。登録患者さんについては緊急入院にも応じています。

【在宅医療チーム】住み慣れた自宅での緩和ケアを望む場合は、同院附属クリニックの医師・看護師による訪問診療・訪問看護を受けられる。入院と在宅の両輪でケアできることが同院の特長。

 人間は誰でもいつか死を迎え、それを経験するのは一度きりです。だからこそ、「こうしたい」「こうありたい」という希望をかなえ、最後まで寄り添うことが大切だと考えています。

 聖書には「何事でも人々からしてほしいと望むことは、人々にもそのとおりにせよ」という言葉があります。人生の最後をできるだけ豊かなものにし、生きてきてよかったと思っていただけるように支援することが私たちの使命です。

【アニマルセラピー】セラピーキャットとして活躍するコマちゃん。他にセラピードッグが13頭登録されている。昔飼っていたペットのことを思い出し、自分らしさを取り戻す患者さんもいるという。

INFORMATION

東京衛生アドベンチスト病院
〒167-8507 東京都杉並区天沼3-17-3
【ホスピス相談】
電話:03-3392-6151(代表)
受付時間:月~木 9:00~17:00/金 9:00~12:00
https://www.tokyoeisei.com

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