「膝の痛みで趣味が楽しめない」「遠出を避けるようになった」など、膝の不調が日常生活に影響を及ぼすことがあります。膝の状態について正しい知識を持ち、早めに医療機関で相談することで、生活の質の維持につながる可能性があります。帝京大学医学部整形外科教授 中川匠先生に、変形性膝関節症の原因や、現在行われている治療の選択肢についてお話をうかがいました。

帝京大学医学部整形外科教授
中川 匠 先生
膝の痛みの原因と40代以降に増えるサイン
膝の痛みは、加齢による軟骨の摩耗や肥満、骨粗しょう症などが要因となることがあります。立ち上がりや階段の昇り降りで違和感を覚えたり、腫れや水がたまる症状が現れる場合もあります。こうした変化の背景には、変形性膝関節症が関係していることもあり、国内では約2500万人※が膝の痛みに悩んでいるとされています。症状が進行すると治療が複雑になる可能性もあるため、違和感を年齢のせいと見過ごさず、早めに専門医へ相談することが大切です。
※出典:日本整形外科学会 変形性膝関節症診療ガイドライン2023の統計

膝の痛みを改善するための治療法
膝の痛みで医療機関を受診すると、画像検査や問診・触診などを通じて膝関節の状態を評価し、症状に応じた治療方針が検討されます。治療法は「保存的療法」と「外科的治療」に大きく分けられ、保存的療法では運動療法や薬物療法、関節内注射などを行います。
外科的治療には、膝関節全体を人工関節に置き替える「全置換術(ぜんちかんじゅつ)」と、膝の一部のみを置き替える「部分置換術(ぶぶんちかんじゅつ)」があります。術式の選択は、診察や画像診断をもとに、膝の状態を総合的に判断して決定します。
部分置換術は、関節の一部のみを対象とするため、筋肉や靭帯を温存できる点や、手術の侵襲が比較的少ない点が特長です。術後の回復が早い傾向があり、リハビリ期間は1~2週間程度、スポーツの再開は3~6か月を目安とするケースもあります。

ロボット支援人工関節置換術のメリット
人工関節手術に対しては、「術後元通りに動けるのか」「リハビリが長引くのでは」といった不安を感じる方もいらっしゃいます。関節の一部のみを置き換える部分置換術は、身体への負担が少ないとされる低侵襲手術の一つで、術後の回復が比較的早い傾向にあります。ただし、術式の難易度が高く、術後成績にばらつきが出ることや、再置換の可能性が指摘されることもあります。
こうした課題に対応する技術として、近年ではロボット支援による人工関節置換術が導入されています。術前に撮影したCT画像をもとに、モニター上で骨の切除位置を細かく計画し、術中はロボティックアームが医師の操作を支援します。これにより、術前計画に基づいた再現性の高いインプラント設置が期待できます。
販売名: Makoシステム
医療機器承認番号: 22900BZX00325000
製造販売業者: 日本ストライカー株式会社
ロボットはあくまで医師の手術を補助するものであり、自動で手術を行うものではありません。術者の経験や判断とあわせて、より安定した手術の実現を目指す技術として注目されています。

痛みのない明日へ向けて、今できること
変形性膝関節症は、早期に医療機関で相談することで、日常生活への影響を軽減できる可能性がある疾患です。症状が進行する前に対応することで、治療の選択肢が広がり、回復までの期間が短くなる場合もあります。運動や旅行、階段の昇降などで感じる不自由さを放置せず、自分らしい生活を見直すきっかけとして、整形外科での相談を検討してみてはいかがでしょうか。
※本記事は一般的な医療情報の提供を目的としており、特定の治療法の効果を保証するものではありません。症状に関するご相談は、医師にご相談ください。
膝関節セルフチェックで膝を守ろう

膝関節は、体重を支えて立つ・歩くなどの移動を行う上で欠かせない大切な関節です。まずはご自身の膝関節の症状をチェックしてみましょう。
□ O脚である(まっすぐ立つと左右の膝の間があいている)
□ 時々違和感がある
□ まっすぐに伸ばせない
□ 曲がりにくい、正座ができない
□ 歩き始めに痛むが、しばらくすると楽になる
□ 立ち上がるときに痛い
□ 曲げ伸ばしすると、ギシギシ音がする
□ 不安定な感じがする
□ 腫れて熱っぽい感じがする
□ 痛みのために何もしたくない、何もできない
スマホで簡単に結果をご確認いただけます。診断結果は参考です。詳しくは医師にご相談ください。
膝関節セルフチェック
「関節の広場」では、膝の症状でお悩みの方に、近くの医療機関情報を提供しています。気になる症状がある方や早めに予防したい方は、近くの医療機関を探してみてください。
関節の広場INFORMATION
日本ストライカー株式会社
160-0023 東京都新宿区西新宿5-1-1 新宿ファーストタワー
P 03 6894 0000
www.stryker.com/jp
