JR鶴見駅より徒歩5分。曹洞宗大本山總持寺の深い緑に抱かれた鶴見大学歯学部附属病院は、「患者さん中心の病院」をモットーに、地域住民の歯・口・あごの悩みに応え、先進的な医療を提供する。

鶴見大学歯学部附属病院
濱田良樹 病院長
はまだ・よしき 1989年東北大学歯学部卒業、2008年口腔顎顔面外科学講座教授、25年4月より現職。現在、日本顎変形症学会理事長、日本口腔外科学会常任理事、日本顎関節学会常任理事を務める。
当院は地域唯一の“歯科の総合病院”で、あらゆる歯科疾患に対して、質の高い医療を提供してきました。運営理念はPatient-centered hospital(患者さん中心の病院)。大学病院ならではの臨床研究と医療の発展に努めると共に、地域住民の健康寿命延伸への貢献が求められています。
口腔内の細菌によって生じる歯周病(歯槽膿漏)が、糖尿病や脳梗塞など全身疾患と深く関係することはよく知られています。昨今では、国も口腔衛生管理(口腔ケア)を予防医療と健康の維持・増進の要と位置づけています。
例えば、手術を控えた患者さんの口腔ケアを徹底すると、術後の発熱などのトラブルが減ります。がんの化学療法や放射線治療に伴う口内炎も抑制でき、治療の完遂率、延いては生存率を高めます。
当院は近隣の病院と連携し、このような患者さんの口腔ケアを担当しています。また、地域の歯科診療所とも連携し、多くの患者さんをご紹介頂いています。
デジタル技術を駆使した顎骨の再建医療
口腔外科では、がん・良性腫瘍の手術や外傷などで欠損したあごの骨の再建を手掛け、高く評価されています。具体的には、CTデータを基に作成した精密な実体模型上で、欠損部を復元するためのチタンメッシュトレーを作り、患者さんのあごの骨に装着し、その中に腰や膝の骨から採取した骨髄・海綿骨細片を充填します。半年~一年後には、普通の骨と同じようにインプラント治療も可能となり、元通りに近い咬合と顔貌を取り戻せます。
下:手術後、下あごの歯は失ったが、下顎骨はほぼ元通りに再建。
当院の今後の課題は、障碍者歯科と訪問歯科の充実です。訪問歯科の対象は在宅医療を受けている方、入院中の方、老人ホーム等に入所中の方です。とくに口腔ケアや嚥下機能の評価とリハビリが重要で、誤嚥性肺炎の予防に繋がります。
大切なことは、一人ひとりの全身状態、生活背景や価値観を鑑みた治療方針を設定することで、高齢の在宅患者の方に、大掛かりな歯科治療を行うことが正しいとは限りません。ご家族、医師、看護師、薬剤師、介護士、言語聴覚士など、患者さんに関わる皆さんと情報共有し協働することで、患者さんの穏やかな日々を支えることが最優先。まさに患者さん中心の医療の下、終末期へのソフトランディングを支援することも私たちの役目と考えています。

