住友不動産は地域住民、行政と対話を重ねながら、地域の課題解決に資する、未来志向の再開発に取り組んでいる。

防災面の課題を解消しにぎわいを取り戻す

 住友不動産は、再開発を通じて街の課題と向き合い、その地域にふさわしい新たな価値創造を進めてきた。東京・新宿副都心エリアに位置する「西新宿五丁目北地区防災街区整備事業」もその一例だ。

右:オフィス棟の「住友不動産新宿ファーストタワー」。左:住宅棟の「シティタワー新宿」

 JR新宿駅から北西におよそ1・2キロ。青梅街道と十二社通り、神田川に囲まれたかつての古い街並みは、オフィスと住宅を有した二つの最先端タワーを中心に、川沿いの散歩道や親水公園、商業施設が整備され、そこに住む人、働く人、訪れる人すべてに安心で魅力ある「職住一体」の街へと生まれ変わった。

 この地域は、青梅街道沿いに旧耐震のビル等が建ち並び、その内側には老朽化した木造住宅が密集し、地域全体で防災性の向上が課題となっていた。また、昔は商店が立ち並びにぎわいを見せたが、時代の流れとともに少しずつ活気が失われつつあった。

「街を強くし、かつての活気を取り戻したい」──。そう思う地元住民らの手で、新しい街づくりが始まった。そこで事業のパートナーに選ばれたのが、住友不動産だ。

 バブル崩壊などで事業継続が難しい時代にも住友不動産は一貫して西新宿の再開発に取り組み続け、難しい再開発事業をいくつもまとめあげた。その実行力を評価しての事業者選定だったという。

防災上の課題を解決

左:旧耐震のビルや老朽化した木造住宅が密集し、防災上の課題を多く抱えていた「西新宿五丁目北地区」。
右:道路を拡幅し、神田川沿いの公園や広場を整備。災害発生時には、タワーと一体的に帰宅困難者の一時滞在施設に。

街の記憶を尊重し思いを丁寧に具現化

 再開発にあたって住友不動産が最も重視したのが、地元住民との対話だ。多様な意見を持つ地権者の方々と膝詰めの協議を重ねた。生活の利便性を高めるスーパーの誘致や、かつて地域を流れていた川を思い起こさせる水辺の設計、「地域の歴史を残したい」という思いを反映した広場の舗装デザインなど、住民の声一つひとつを丁寧に具現化していった。

毎年9月に開催される「十二社熊野神社例大祭」では、新しい住民も参加し、多世代の交流が生まれている。

 また、最先端のタワーを中心にした整備で地域の防災機能は大きく向上した。公園や広場を一体的に配置することで、火災の延焼を防ぐ「延焼遮断帯」を形成。免震構造のタワーや隣接する広場は、緊急時に帰宅困難者の一時受け入れ場所となることを想定し、炊き出し設備や防災備蓄倉庫も配置している。

 また広場では住民主体のエリアマネジメント団体が交流イベントを開き、子どもからお年寄りまでがふれ合う多世代交流が生まれている。地域で育まれた絆は、有事の助け合いにも力を発揮するはずだ。

 再開発とは、最先端の建物に更新して終わりではない。地域の記憶を継承し、そこに集う人々が未来へ歩んでいける基盤を作りあげる。それが、住友不動産の目指す再開発のあり方だ。これからも住友不動産は、地域の人々と信頼関係を築きながら、未来につながる街づくりを目指して歩み続ける。

賑わいのある多世代交流が実現

西新宿五丁目北地区
防災街区整備事業組合
理事長 佐々一郎さん

この辺りはかつて狭い道に古い木造住宅が密集しており、防災面で多くの不安がありました。受け継いだ地元を何とかしたい、との想いで、2006年に有志と共に再開発の検討を始めました。複数のデベロッパーと話をしましたが、住友不動産は西新宿で難しい再開発をいくつもやり遂げていたのを知っていたので、是非とお願いしました。再開発により防災機能も向上し、今の暮らしは本当に安心できるものになりました。そして、今では新しい住民やオフィスワーカーの増加により、地元のお祭りにも活気が出て、地域のコミュニティも再生され、再開発を開始した頃に思い描いていた「賑わいのある多世代の交流」が実現してきています。

Emi Morishige

出典元

文藝春秋

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